2021年5月場所個別評価 遠藤 

 今場所は西前頭8枚目だったが11勝4敗の好成績で2019年7月場所以来4回目の技能賞に輝いた。前半戦は6勝2敗で折り返した。そして後半戦は連勝するも12日目は琴恵光に敗れて3敗。終盤は朝乃山の休場もあり、大関戦となったが13日目の貴景勝戦は土俵際の逆転の突き落としで波乱を起こした。そして最大の見せ場はやはり14日目の照ノ富士戦である。二本差すと照ノ富士は防戦一方となり、最後は投げの打ち合いとなったが物言いの末遠藤の勝ちとなった。優勝争いを千秋楽まで持ち越させたという意味では非常に大きな1勝だった。千秋楽の正代戦は勝てば決定戦進出の可能性もあったが押し出しで敗れ、決定戦進出とはいかなかった。

 内容に関しては左四つの相撲を主体に対戦相手によっては突き押しをするなど取り口を変えていた。2日目の輝戦は押し込まれるも右に回り込み、左に叩いた。軍配は輝に挙がったが物言いが付き、差し違いで遠藤の勝ちとなった。スローで観たが遠藤の足が俵の上に乗っており、踏み越していなかった。このあたりは素晴らしいと同時に行司泣かせの力士でもある。また怪我で番付を下げていたが、平幕中位での二桁勝利は実績を考えれば当然である。そして14日目の照ノ富士戦はお見事としか言いようのない相撲だったが、二本差し、相手に廻しを与えない上に抱え込ませない技術、そして土俵際で見せた足腰の柔らかさ。まさに遠藤の持ち味が凝縮された相撲内容だった。ちなみに終盤盛り上げたのになぜ殊勲賞ではないのか?と思ったが選考委員会で伊勢ヶ浜部長が「技能賞は優勝するかしないかには関わらないもの。それに、終盤戦を盛り上げたけど、勝った相手は大関であって横綱ではない」と見解を示しており、私は納得している。また白鵬が6場所連続休場している意味を考えさせられる言葉でもある。

 7月場所は東前頭筆頭という番付となったが勝ち越しての三役復帰を期待したい。最近は怪我が相次いでおり、稽古も怪我をする前の三分の一しかできなくなったようである。また痛めている膝も完治は見込めず、怪我と上手く付き合っていくしかないという状況である。ある意味では両膝に爆弾を抱えている照ノ富士と同じである。毎日覚悟をもって土俵に上がっているようだ。しかし持っている能力は大関候補と比べても遜色ない。身体と上手く付き合いながら、今場所のように見せ場をたくさん作って欲しいところだ。