2025年1月場所を振り返って 豊昇龍横綱昇進に関して

 2025年1月場所は大関豊昇龍が逆転で9場所ぶり2度目の優勝を果たした。2敗でトップだった平幕の金峰山が同じく平幕で3敗の王鵬に敗れた。その後豊昇龍が結びで琴櫻を破り、3人が12勝3敗で並び、豊昇龍、王鵬、金峰山による優勝決定巴戦となった。また優勝決定巴戦は2022年11月場所の阿炎、貴景勝、高安(阿炎が優勝)以来13場所ぶり8度目となった。巴戦は豊昇龍がまずは金峰山を寄り切りで破ると続いて登場した王鵬を寄り倒して連勝し、優勝を決めた。

 またこの結果を受け、審判部が八角理事長に臨時理事会の開催を要請し、了承された。これにより豊昇龍の横綱昇進が確実となった。また今場所6日目に一人横綱の照ノ富士が引退したが、豊昇龍の昇進で32年ぶりの横綱空位は回避された。

 豊昇龍の横綱昇進に関しては12勝での優勝ということで物足りない印象は否めない。普通ならもう一場所様子を見てというところである。しかし先述の通り照ノ富士の引退で横綱空位となる可能性が出て来た。また横綱空位は過去2例しかなく、そのうちの1例は1931年で戦前である。横綱空位は協会にとっては何としても避けたい事態であり、照ノ富士も回避するために膝の痛みに耐えて頑張ってきたという背景もある。

 そしてもう1例は1992年5月場所前に北勝海(現八角理事長)が引退してから1993年1月場所後に曙が横綱に昇進するまでの5場所である。当時はこうなったら強い横綱が誕生するまで待とうという横審の方針もあったと記憶している。しかしそれでも横綱空位は寂しかったことを覚えている。おそらく協会関係者は私以上に寂しい思いをしているのは容易に想像がつく。空位ということで協会の顔となる存在もいなければ横綱土俵入りも行われない。横綱休場による横綱不在とは訳が違う。

 その後曙が横綱に昇進したが、個人的には他でもない、曙の昇進が一番嬉しかった記憶がある。勿論記念すべき外国人初の横綱誕生というのもあるが、何より横綱空位が終わることが嬉しかった。おそらく30年前の記憶が協会関係者の間で根強く残っているものと思われる。

 ということで私的には豊昇龍の横綱昇進は文句なしとは言えないものの、協会の立場も分かってあげて欲しいという考えである。あとは豊昇龍が照ノ富士に代わる横綱として頑張っていくしかない。それでも千秋楽に審判部は「優勝すれば」と明言しており、金峰山が本割で勝っていれば豊昇龍の綱取りが見送られたのは事実である。そう考えると横綱空位回避の立役者は王鵬かもしれない。もっとも横綱を含めて番付は審判部という「人」が決める事なので、そこにドラマが生まれる。そして豊昇龍横綱昇進も一つのドラマと言えそうだ。

続く