2021年5月場所個別評価 明生

 今場所は東前頭2枚目だったが8勝7敗で勝ち越した。若隆景同様、序盤5日間は大関戦と高安戦だったが1勝4敗だった。そして前半戦は3勝5敗で折り返した。しかし後半戦は巻き返した。11日目からは連勝し、14日目に勝ち越しを決めた。

 内容に関しては左四つの相撲と押し相撲で白星を挙げていた。2日目の朝乃山戦は左からおっつけられるも右を差し込み、掬いながら体を入れ替え、押し出した。そして14日目の玉鷲戦は鋭い踏み込みから左を差し、一気に寄るも土俵際で玉鷲に右小手投げを打たれ、軍配は玉鷲に上がったが物言いが付いた。協議の結果、玉鷲の右かかとが先に出ており、軍配差し違いで明生の勝ちとなった。取組後解説の元横綱稀勢の里の荒磯親方が話していたが、ヒジを伸ばしたまま寄ると投げを食いやすくなると解説していた。確かに左を深く差して突きつけるように寄るのが明生の持ち味だが、今後は左の使い方はもう少し考えたほうがいいかもしれない。千秋楽も同じような形になり、隠岐の海に小手投げで敗れた。また初日の照ノ富士戦は照ノ富士が左を深く差しにくることを想定して相撲を取っていた。結局最後は極められて放り捨てられた。平幕相手なら左を深く差しても通用すると思うが、三役以上になると体の大きい力士が多くなるのでそうはいかなくなる。もっとも明生は器用なタイプの力士であり、考え方ひとつというところである。一方若隆景や翔猿といった小兵・軽量力士には勝っていた。駆け引きが前面に出た一番となったがいずれも叩き込みで下した。こういった力士をさばくのは上手である。

 7月場所は西小結となり、新三役となった。勝ち越しを期待したい。そして今場所は上位戦は朝乃山にしか勝てなかったが大関戦と高安戦がポイントとなりそうだ。繰り返しになるが、左差しにこだわるのではなく、もうひと工夫が欲しい。初日から上位力士との対戦が続くが一つでも多く勝って勢いに乗りたい。今後が楽しみな力士の一人である。