2024年11月場所個別評価 安青錦 

 今場所は新十両の場所であり、東十両11枚目だったが10勝5敗の好成績だった。4連勝スタートを切り、前半戦は6勝2敗で折り返した。そして後半戦は9日目から連敗したがその後は連勝し、14日目に10勝目を挙げた。千秋楽は3敗の金峰山戦であり、勝てば決定戦に持ち込める一番だったが突き出しで敗れ、決定戦進出は成らなかった。

 さて新十両ということで安青錦の紹介をしたい。安青錦はウクライナ・ヴィン二ツァ州出身で安治川部屋所属であり、年齢は20歳である。また身長180センチ、体重125キロであり、押し・左四つ・寄りを得意としている。戦火のウクライナでは練習がままならず、2022年4月に国際大会で知り合った関西大相撲部の関係者を頼って来日した。そして移住して関西大や報徳学園などに練習に通った。その後報徳学園の元監督から安治川親方(元関脇・安美錦)に連絡があり、入門した。そして半年間の研修期間を経て初土俵を踏んだ。出世は早く、初土俵から所要7場所での関取昇進は、年6場所制となった1958年以降では史上5位のスピード出世となった。

 内容に関しては相撲の上手さが光った。4日目の大翔鵬戦は当たってすぐに右を差し、左で前廻しを取ると右からの下手投げで200キロ近い巨漢を転がした。前廻しを取った左からの攻めではなく、大翔鵬も意表を突かれた感じだった。13日目の大奄美戦は当たってすぐに左を差すと右手で大奄美の膝を払い、内無双で巨体を転がした。内無双自体滅多に見られる技ではなく、実況アナウンサーも気付いていなかった。外国出身とはいえ、相当な業師であるのは確かなようだ。また負けはしたものの、5日目の欧勝海との全勝対決は熱戦となった。当たって左下手を取ると右上手を取り、十分な形を作った。一方の欧勝海も右は1枚ながらも上手廻しを引き、がっぷり四つの攻防となった。安青錦が内掛けなどで仕掛けるも欧勝海が粘って残し、長い相撲となった。最後は安青錦が右上手投げから頭を付けて寄って前に出るも欧勝海が土俵際で左から突き落とし、勝負を付けた。やはりがっぷりに組み合うと不利になるので、できるだけがっぷりにはならない相撲を心掛けたい。

 来場所は西十両5枚目となったが、再度の二桁勝利を期待したい。能力は通用しており、今は目先の結果よりも先を見据えて稽古をし、力を付けたい。稽古だけでなく、増量も課題である。それでも魅力がたくさん詰まった力士であり、食い下がるような相撲内容は三代目若乃花を彷彿とさせる。今後は三役に止まらず、看板力士になる可能性も秘めており、要注目の力士である。