2021年3月場所個別評価 英乃海
3年ぶりの再入幕となったが10勝5敗の好成績で弟・翔猿と兄弟揃っての2桁勝利となった。前半戦は4勝4敗で折り返した。そして後半戦は連勝し、12日目に勝ち越しを決めた。千秋楽は激しい相撲の末、豊昇龍を掬い投げで破り、白星を2桁に乗せた。
相撲以前に兄弟から触れなければならない。幕内に復帰したことで翔猿とともに兄弟同時幕内を果たした。2014年3月場所、弟・千代鳳、兄・千代丸以来7年ぶりで史上9組目となる。昇進は英乃海のほうが早かったが怪我が相次ぎ、十両で低迷する日々が続いた。その間に翔猿が追い越し、幕内で脚光を浴びるまで出世した。体格は英乃海のほうが恵まれているのでこの結果は全く予想していなかった。また顔も体格も相撲の取り口も全く似ていないのがこの兄弟の面白いところである。
さて内容に関しては右四つの相撲で白星を挙げていた。英乃海は右四つが得意だが、モロ差しが一番攻めやすい形である。また相四つで組み止めたとしても相手に上手を取られると苦しくなることが多い。そして二次的だが押し相撲も取れる。上体が柔らかいので正代のように臨機応変に相撲が取れるタイプである。それを象徴したのが千秋楽の豊昇龍戦である。右の相四つからの攻防となったが二度の内掛けをこらえ、足を外した直後に右から掬って転がした。持ち味である柔軟性が生きた一番だった。そして両者ともに気持ちの入った熱戦だった。
来場所は9枚半上昇し、自己最高位となる東前頭6枚目となった。翔猿とともに自己最高位を更新した。やはり千秋楽に勝ち、白星を2桁に乗せたことが大きい。9勝だと基本的にはここまで番付は上げてもらえない。相手は強くなるが相手が知らないというメリットもある。勝ち越しは意識せず、自分の相撲を取ることに集中したい。それでも翔猿が頑張っているので欲は出てくるかもしれない。兄弟揃っての更なる出世を期待したいところだ。
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