2024年11月場所個別評価 翔猿

 今場所は東前頭5枚目だったが9勝6敗で勝ち越した。5枚目という番付であり、7日目までは平幕力士との対戦となったが5勝2敗と白星が先行した。8日目からは役力士との対戦が多くなると黒星が増え、6勝6敗の五分となった。終盤は連勝し、14日目に勝ち越しを決めると千秋楽は湘南乃海を押し出し、9勝で場所を終えた。

 内容に関しては翔猿らしい押し相撲と叩く相撲で白星を挙げていた。2日目の美ノ海戦は押し合いといなし合いの激しい攻防となったが最後は土俵際で左足一本で残し、右に回りながら転がした。マゲつかみの物言いが付いたが引っ張っておらず、軍配通りとなった。7日目の錦木戦は押し合いといなし合いの後互いに見合う形となったが、翔猿が手を出しながら押すと懐に入り、押し出した。9日目の宇良戦は右を差して徐々に上体を起こしたが逆に宇良に右を差され、振りほどかれた。その後低い体勢で見合う形となったが翔猿が左にいなすと宇良が横を向いたところで送り出した。これで幕内での対戦成績は翔猿の9勝4敗であり、上手さで勝っている印象がある。そして千秋楽の湘南乃海戦は押し合ったり見合ったりの展開となったが、蹴返しで揺さぶったのが効いた。湘南乃海の腰が引けた感じとなり、最後は相手を見ながらゆっくりと押し出した。時間は37秒かかったが、長い相撲の中で足技を繰り出すあたりは稽古を積んでいる証拠である。

 さて今年1年の翔猿は前頭5枚目以内の番付に定着していたものの、三役には昇進できなかった。今場所も役力士との対戦があったものの勝ったのは正代戦のみであり、三役復帰に向けてはどれだけ役力士を倒せるかが鍵となりそうだ。そして来年も三役昇進を懸けた戦いとなる。

 来場所は再度の上位総当たりの番付となりそうだが、1人でも多くの役力士を倒して流れに乗りたい。特に三役の4人はいずれも実力者であり、勝敗が場所を大きく左右しそうである。まずは相手の動きを止め、駆け引きの上手さを生かせる展開に持ち込みたい。地力はあるのであとは結果が出るかどうかであり、再度の三役昇進といきたいところだ。