2021年3月場所個別評価 翔猿

 今場所は10勝5敗という成績であり、新入幕以来3場所ぶりに勝ち越した。連敗スタートも3日目からは連勝し、前半戦は5勝3敗で折り返した。そして11日目に勝ち越しを決めるも12日目からは連敗し、優勝争いから脱落した。それでも14日目は優勝争いのトップに立つ高安を激戦の末首捻りで破り、終盤の土俵を盛り上げた。そして千秋楽も勝ち、2桁勝利となった。

 内容に関しては立ち合いで変化する相撲はほとんどなく、押し相撲で勝負していた。また今場所は廻しを取る相撲が多かった。基本的には突き押しからの引き技や足技で勝負するタイプなので少し驚いた。相撲の幅が広がってきている。11日目は琴恵光に土俵際で起死回生の突き落としを決めた。そして先程も触れたが14日目も土俵際の逆転で高安を沈めた。土俵際での逆転が翔猿の真骨頂だが、押す力が強くなっているのでこういった技が効いている。体重134キロの軽量力士だが、あっさり押し出されて負けるといった相撲はほとんど見られなくなった。力を付けてきている証拠である。

 5月場所は自己最高位を更新し、西前頭2枚目となった。上位力士にとっては嫌な存在となりそうである。そして今場所の高安戦のように不利な体勢からでも逆転できるのが翔猿の魅力である。上位力士を一人でも多く倒し、土俵をかき回す役割を期待したい。