この部屋に注目! 中村部屋 独自のトレーニング方法 土俵での稽古

 まずはチューブを使ったカニ歩きから始まる。四股も踏むが、片足を上げて30秒ほど制止する形で行われる。申し合いも四つに組んだ状態で始まり、立ち合いでの当たりは省略される。不利な体勢からスタートすることで巻き替えなどの技術を習得できるようである。師匠は語る。「相撲も取りますが1日数番。現役時代から相撲を取るための筋肉、いわゆる『相撲筋』を鍛えたいと思っていた。組み合った状態から始めれば技術を覚えるだけでなく、体幹を支える筋肉も鍛えられる。人はマンネリするので刺激を少しずつ増やす工夫もしている。四股は4パターン、すり足も3パターンある」

 四つに組む稽古に関しては四つには組むけれど廻しは掴まないなどの制限も考えているようだ。上位力士が幕下以下の力士相手に不利な体勢で組み、そこから稽古を始めるといった話を聞いたことがある。不利な体勢から挽回することが目的だが、これと似ているのかもしれない。

 そしてぶつかり稽古に関しても頭から当たらず、押して前に出るだけのもので、これがけっこうきついみたいである。今でいえば大の里や尊富士のように立ち合いのぶちかましや出足で一気に運べたら技術面の必要性がなくなる。よって立ち合いを省略することで攻防の中で技を身に付けるという考え方は理解できる。革新的な考え方を持っている中村親方だからこそできる発想かもしれない。

続く