2022年11月場所個別評価 正代

 今場所は6勝9敗という成績に終わり、13場所守ってきた大関から陥落となった。大関復帰を目指した御嶽海も負け越し、復帰できなかったので来場所は125年ぶりの一横綱一大関となる。

 黒星スタートとなり、4日目からは連敗。そして8日目は佐田の海に敗れ、4勝4敗で折り返した。後半戦は役力士との対戦を残しており、この成績では勝ち越しは厳しい。後半戦は9日目、10日目と一方的な相撲で敗れると13日目は玉鷲に押し出しで敗れ、負け越すと同時に大関陥落が決定した。

 内容に関しては立ち合いの圧力が弱かったことが全てである。また大関なので前に出る相撲が取れなければ相手に動きを研究され、丸裸にされてしまう。調子が上がらなかった上に相手に研究され尽くされた結果である。とはいえ、大関の座を明け渡したというのは非常に残念である。

 また大関から陥落した原因は他にもある。一つは体調が良くなかったのではないかということである。休場してもいい状態でありながら、本人の意思で出場していたのではないか。これは御嶽海にも同じことが当てはまる。昔はだらしない相撲を取れば師匠の判断で強制的に休場させたものだが、今は師匠と力士の立場が対等になった印象がある。時には師匠の判断で休場させてもいいのではないかと私は思うのだが…。そしてもう一つは同部屋の十両の豊山の引退である。まだ29歳であり、少し驚いたが両肘を痛め、腕が限界と語っていた。他には所属する時津風部屋には関取はおらず、満足に稽古できる環境ではなかったのかもしれない。昔でいえば若貴フィーバーに沸いた二子山部屋のように一人強い力士が現れると相乗効果で部屋に次々と強い力士が出てくることがよくある。そしてその逆もしかりである。豊山がバリバリ稽古できる体であればひょっとしたら大関陥落はなかったかもしれない。コロナ禍で出稽古ができるようになったのもつい最近の事であり、稽古できない環境というのも一因として挙げられる。ただ本人が冬巡業の後に語っていたように、豊山が引退し、部屋には関取一人となった以上、調整法を変える必要がある。自分なりに考えて試行錯誤してほしい。

 さて来場所は10勝以上を挙げれば大関復帰となるが、冬巡業での質問コーナーで「頑張りたいと思いますが、あまり期待しないでください」と話すあたりが正代らしい。現実的には9月場所が4勝で関脇に陥落した御嶽海が今場所は6勝という結果に照らし合わせてみれば勝ち越せるかどうかといったところだと思う。ただ立ち合いの圧力さえ戻れば大関復帰の可能性もあると私は見ている。正代は一言でいえば強さと脆さが同居した力士なので、来場所は強い相撲が観たいところだ。