角界のスプリンター! 尊富士 最後に

 本人は一生懸命相撲を取るだけだが、今後に向けては今場所と来年1年が非常に大事である。横綱・照ノ富士には「早く三役に上がれ」とハッパをかけられているようだが、本当に横綱の言う通りである。新入幕優勝を果たし、勝率の高さを見ても凄い力士であるのは確かである。しかし番付を上げなければ意味がない。よって今後は大勝ちするだけでなく、怪我をしないことが求められる。分かっているとは思うが相撲内容だけではなく、その当たりの部分も頭に入れて相撲を取って欲しいところだ。

 それでも期待はやはり大きい。体重も増え、公称143キロの体重を150キロ台に乗せて来たみたいだ。それに加えて上半身が一回り大きくなり、パワーアップしている。相撲内容も進化しており、今場所は優勝した場所のように再度初日から白星を並べてくると私は予想している。問題は対戦相手の方である。何が何でも勝つという相撲を取るのか?。それとも自分の相撲に徹するのか?。対応に注目したい。また3月場所は琴櫻など上位力士を倒しており、役力士も尊富士と対戦することを頭に入れておくべきだと思っている。

 出足の速さが最大の持ち味であり、その精度は新大関となった大の里より上である。やはり目指すは相手に何もさせない相撲である。また出足を武器に活躍した力士は多いが、あれだけ上半身が発達した力士は他に記憶がない。強いて挙げれば筋力トレーニングで大横綱となった千代の富士あたりか。しかし千代の富士は前廻しを取る相撲であり、尊富士とは相撲の取り口が違う。性格的な部分を含めて前に出る相撲を良しとする大相撲の世界には合っている。

 あとは繰り返しになってしまうが、怪我だけには注意して相撲を取って欲しい。九州入り直前1週間は1日1000回のてっぽうを自らに課したようだ。稽古場の隅に立てられたてっぽう柱に、突っ張るように黙々と打ち続ける稽古である。そしててっぽうは四股、すり足とともに相撲の根幹の基礎運動である。基礎運動は怪我を防止するものでもあり、基礎を大事にした上で、まずは三役昇進といきたい。

終わり