2021年1月場所個別評価 翠富士

 新入幕だったが9勝6敗という成績で技能賞を受賞した。なお新入幕での技能賞受賞は平成9年3月場所の出島以来6人目である。そして出身の静岡県からは初の三賞力士となった。3連勝スタートもあり、前半戦は5勝3敗で折り返した。後半戦は連敗したが11日目からは連勝し、13日目に勝ち越しを決めた。そして千秋楽の翔猿戦は勝てば受賞という条件付きとなったが肩透かしで破り、技能賞を手にした。

 内容に関しては肩透かしで5番勝っており、肩透かしの上手さが光った。中でも12日目に巨漢の碧山を土俵際で左に回り込んで転がした相撲が印象に残った。一言で肩透かしとは言っても翠富士は左右どちらからでも技を繰り出せる。その上技を出すタイミングもワンパターンではない。攻防の中での肩透かしもあれば11日目の徳勝龍戦のように立ち合いで当たってすぐの肩透かしもあった。その一方で厳しい言い方をすれば前に出るも攻めきれない相撲が何番か見られた。おそらく本人はもっと前に出る相撲が取りたいものと思われる。

 3月場所は東前頭10枚目と自己最高位を更新したが1月場所後の稽古で腰のヘルニアを発症したみたいだ。本人が言うには間に合うみたいだが本調子で迎えるのは難しそうだ。怪我を除けばやはり体重を増やしたい。現在114キロだがあと10キロは増量したい。体重が増えれば押されにくくなるし、技に頼る部分も少なくなる。逆に今のままだと相手に動きを読まれた時が厳しくなってくる。更なる進化を期待したい。手本はやはり部屋の兄弟子の照強である。増量した上で立ち合いの当たりを強くし、幕内定着といきたいところだ。小兵力士は当然注目されるが、炎鵬と石浦は現在十両であり、幕内に定着するのも大変である。現在4場所連続勝ち越し中であり、上り調子は明らかだがここからが本当の勝負である。押されさえしなければ技は持っている力士なので今後注目していきたい。