2024年7月場所個別評価 翔猿

 今場所は東前頭4枚目だったが9勝6敗で勝ち越した。黒星スタートも4日目は貴景勝を破り、序盤は4勝1敗と好スタートを切った。しかし6日目からは上位力士との対戦との対戦が続いたこともあり4連敗し、黒星が先行した。しかしその後は巻き返すと14日目は欧勝馬を蹴返しで破り、勝ち越しを決めた。

 内容に関してはいつものように押して、引いての駆け引きのある相撲を取っていた。印象に残ったのは4日目の貴景勝戦と14日目の欧勝馬戦である。貴景勝戦は懐に入ろうとすると左から強烈な張り手を食らった。しかし左を抱えて寄られながらも右の差し手を抜き、送り投げで仕留めた。張り手が効いたのだろう。取組後はしばらく両膝に手を当て、ふらつくのをこらえていた。また対戦成績はこれで7勝6敗となり、貴景勝キラーと言っても過言ではない。欧勝馬戦は突き合い、押し合いとなり、互いが得意な形となった。その後翔猿が機を見ての右蹴返しで欧勝馬を土俵に沈めた。相手も警戒しておらず、足技が鮮やかに決まった。十両以下の頃は頻繁に足技を繰り出していたが、入幕後は減った印象がある。しかし元々は業師であり、真骨頂でもある。取組後は大きなどよめきと拍手が起こっていた。何度見てもタイミングが絶妙である。またこういう相撲を見せられると対戦相手が前に出にくくなる。今後の布石にもなる一番だった。

 9月場所は西前頭筆頭となったが勝ち越しての三役復帰を期待したい。また今場所は役力士を2人倒しているが、勝ち越しに向けては3人は倒したい。初日から上位力士と対戦する位置であり、前半戦がポイントとなりそうだ。