2024年7月場所個別評価 平戸海

 今場所は新小結の場所となったが10勝5敗の好成績を挙げ、初三賞となる技能賞を受賞した。西小結ということで初日から上位力士との対戦が続いたが前半戦は5勝3敗で乗り切った。そして後半戦は10日目からは全て平幕との対戦となり、地力が問われた。しかし13日目に再入幕で元関脇の若隆景に敗れた以外は全て勝ち、白星を二桁に乗せた。

 内容に関しては右四つの相撲と押し相撲で白星を挙げていた。初日の照ノ富士戦は寄り切られたものの、左から引っ張り込まれての寄りをこらえて残し、善戦した。7日目の貴景勝戦は押し合いの攻防となったが貴景勝の張り手にも動じず、懐に入って右を差すとそのまま寄り切った。11日目の熱海富士戦は当たって左前廻しを取ると出し投げで崩して押し出した。まさに技能相撲だった。12日目の豪ノ山戦は元同部屋対決となったが、押されるも落ち着いて下からあてがい、相手の引きに乗じて押し出し、勝ち越しを決めた。また貴景勝に加えて3関脇を倒しており、そのうち阿炎戦と霧島戦は力の違いを見せるような内容だった。地力強化は明らかであり、今後が非常に楽しみになってきた。

 決まり手を見ても押し出しで4番勝っており、前廻しにこだわらずに勝てるようになったのは非常に大きい。取り口の幅が広がり、本人も今まで以上にゆとりを持って相撲が取れるはずである。また寄り切りで3番勝っており、そのうちの2番は押し合いから右を差して前に出るという内容だった。前廻し狙いはハードルが高く、なかなか取らせてもらえないので私としては押した後に差して前に出る相撲を取って欲しいと思っている。

 課題としては「雰囲気作り」が挙げられる。場所前は照ノ富士と稽古をし、横綱から「雰囲気に呑みこまれたら息が上がっちゃう。自分の雰囲気を作れ!」とアドバイスされたようである。これは私も感じた部分である。新三役というのもあるかもしれないが、強いオーラとか雰囲気は平戸海には見られない。その部分に関しては他の役力士はオーラを持っている。また同学年の大の里も強いという雰囲気を醸し出している。所属する境川部屋には厳しい師匠がいるだけでなく、佐田の海、妙義龍というベテランの関取がおり、ひょっとしたらその環境が原因かもしれない。しかしこれから強くなる力士である。師匠の言うことを聞くだけでなく、これからは今まで以上に自分の考えを持つことが大事になってきそうである。

 9月場所は再度勝ち越し、三役定着といきたい。三役に上がったばかりだが、9月場所は二大関であり、力さえ付けば早期の大関昇進の可能性もある。また入幕後は揉まれながら少しずつ番付を上げてきており、飛躍への下地は整っている。中卒叩き上げの星として大いに期待したい。