2024年7月場所を振り返って 優勝争い 14日目 照ノ富士ー隆の勝戦 まさかの結末

 相撲はその「ひょっとしたら」が起こった。照ノ富士は立ち合いで隆の勝の右を手繰りに行った。しかしそれがものの見事に空振りした。体が横を向いたところで隆の勝に左からおっつけられた上に右からの強烈なのど輪で上体を一気に起こされた。これでは横綱とはいえどうにもならない。最後は右を深く差され、寄り切られた。これで優勝争いが千秋楽まで持ち越されると同時に優勝の行方が全く分からなくなった。

 まずは負けた照ノ富士に関してである。結果論だが隆の勝の右を抱える作戦は失敗に終わった。普通に考えれば前日までのように左前廻し狙いでじわじわと前に出れば問題なかったように思われる。しかし私には両膝に疲れが溜まり、抱えに行くという選択肢しかなくなったように見えた。つまり前廻し狙いでも鋭く踏み込めなかった可能性がある。ということで一つ負けたというだけでなく、膝の不安を露呈することとなった。本人にとってはここで優勝を決めたかったところだが、体力面を含めて非常に痛い黒星となったのは確かである。

 一方勝った隆の勝はこれ以上ないくらい素晴らしい内容だった。相手のとったりを読み、左おっつけと右のど輪で横綱に何もさせなかった。私的に気になったのが朝稽古の後、珍しく貴景勝からアドバイスを受けたことである。内容は「ナイショ」と話したようだが、このアドバイスの効果が大きかったように見えた。その一番の理由はのど輪押しである。過去の横綱戦では私が記憶した限りではのど輪押しは一度も見せていない。この先はあくまで私の想像だが、隆の勝は貴景勝よりもリーチが長く、隆の勝がのど輪押しをすれば通用するかもしれないと貴景勝が考えていたかもしれない。ともかくのど輪押しがハマったのは事実である。またこれも想像だが、横綱が手繰りにくることをアドバイスした可能性もある。隆の勝が横綱が手繰ることを見切った上で相撲を取ったようにも見えた。よって本人の力量もさることながら、貴景勝のアドバイスが少なからず効果があったと私は考えている。

 14日目終了時点で2敗は照ノ富士、3敗は隆の勝であり、優勝争いは2人に絞られた。

続く