2024年5月場所個別評価 琴勝峰

 今場所は西前頭8枚目だったが8勝7敗で勝ち越した。3連敗スタートも4日目からは7連勝し、白星を先行させた。その後12日目は宇良を小手投げで破り、勝ち越しを決めた。しかし終盤は3連敗し、白星を伸ばすことはできなかった。

 内容に関しては四つ相撲と足腰の良さを活かした粘りのある相撲で白星を挙げていた。好内容だったのは8日目の明生戦と10日目の御嶽海戦である。明生戦は右からいなして押し込むも明生に右を手繰られ、寄り立てられた。しかしこらえて左四つで互いに上手が取れない体勢となった。その後琴勝峰がじわじわ寄ると明生が下手投げに来るのに乗じて右上手を取り、寄り切った。琴勝峰らしい粘りのあるいい相撲だった。御嶽海戦は相手が見ながら突いて出るのを下からあてがいながら右へ回り込み、左からいなして御嶽海を泳がせ、送り出した。リーチの長さと懐の深さを生かしたという点で持ち味を発揮した一番だった。

 一方初日、2日目は玉鷲、正代といずれも実績のあるベテランに一方的な内容で押し出されており、不満が残る。また琴勝峰は特にこれといった型を持った力士ではなく、こういった負けが続くと自分の相撲を見失うリスクがある。よって立ち合いから前に出て圧力を掛けるという意識は常に持ってほしいところだ。それでもこれで4場所連続勝ち越しであり、流れとしては悪くない。一時期の不調からは脱したと言っていい。

 また場所後の6月9日に都内のホテルで珠奈夫人との挙式と披露宴を行った。二人はちょうど1年前の昨年6月9日に婚姻届けを提出し、同年10月24日には長男が誕生した。以前は琴櫻と並んで部屋期待のホープだった。しかし現在は琴櫻に大きく水を開けられている状況である。周囲の評価も高く、これを機に更に番付を上げ、まずは三役昇進といきたい。そして今以上に前に出る相撲が取れれば三役に止まらず、その上を目指せる力士である。貪欲な姿勢で相撲に取組ことを期待したい。