貴景勝は横綱になれるのか? 課題

 ここまで横綱になれる理由を説明してきたが不安な点が一つだけある。それは高いレベルでの優勝はできるのか?ということである。11月場所後に伊勢ケ浜審判長は「レベルの低い優勝も困る」と語っており、この言葉の限りでは12勝以下での優勝なら横綱昇進を見送られる可能性も十分ある。また「レベルの低い優勝」というのは貴景勝にとっては非常に重たい言葉である。なぜなら貴景勝は入幕以降14勝以上を挙げたことがないからである。11月場所は千秋楽に勝てば14勝だったが照ノ富士に敗れ、ハイレベルの優勝とまではいかなかった。

 貴景勝の今の相撲ならある程度の勝ち星は計算できる。ただ負けた相撲を観ても突き押し相撲なので駆け引きを一歩間違えると負ける可能性が高くなる。普通に考えれば全勝は勿論、1敗も厳しい感じがする。そう考えると横綱に上がるには13勝2敗での優勝しかなくなる。また貴景勝は背が高くないのでやはり11月場所のように常に優勝争いをリードしたいところだ。逆に追いかける立場だと優勝は厳しくなってくる。そしてこれも11月場所同様だが、できれば前半戦は全勝で折り返したい。1敗をすると他の上位力士が全勝で折り返した場合、追いかける立場になる。あくまで星勘定的な部分だが、星一つの差でリードを保つのが理想である。

 あとはここ一番での勝負強さに期待したいところだ。11月場所千秋楽は照ノ富士に敗れ、優勝決定戦に持ち込まれた。弱気になってもおかしくなかったが短い時間で気持ちを切り替え、会心の相撲で優勝を手繰り寄せた。確かに相撲は15日間あり、1日1日が大切である。しかし勝たなければいけない一番、負けられない一番があるのも事実である。まずは優勝争いに加わったうえで、終盤に精神力の強さを発揮してほしい。貴景勝なら横綱昇進へのハードルを越えられると私は信じている。