貴景勝は横綱になれるのか? 意識の高さ、精神面の強さ その2

 このエピソードに関して思い出す人物が一人いる。スポーツは違うがメジャーリーグで活躍したイチローである。イチローも小学校時代、プロ野球選手になると宣言し、周囲から笑われたらしい。そしてプロ入り後も挫折があったが年間最多安打を記録し、メジャーリーグでも大活躍したのは周知の通りである。イチローは細身の体型であり、プロ入り前の評価が高かった訳ではない。しかし類まれなバットコントロールに加えて俊足と強肩でファンを魅了した。また例えばファーストゴロがヒットになるなど、野球のあらゆる価値観を変えた選手でもあった。そして自宅にあらゆるトレーニング器具を置くなど、技術向上のための探求心は凄いものがあった。

 イチローにしても貴景勝にしてもそうだが、前例のないものを築き上げるのは大変である。過去と比較するものがないのでどうしても批判の対象になってしまう。それを跳ね返すには結果を残した上で独自のものを築き上げていくしかない。そして貴景勝は独自の突き押し相撲を築き上げてきている。横綱昇進イコール突き押し相撲の完成という訳ではないが、少なくとも周囲を見返す要素の一つにはなる。11月場所は両横綱が初日から休場、そして残る2大関が途中休場した中で優勝し、一人大関としての役割を果たした。当然と言ってしまえばそれまでだが、精神面が強くなければできることではない。今まで両横綱が休場し、頼りない大関陣の姿を何度も見てきているので、11月場所の貴景勝を見て頼もしく感じたのは私だけではないと思う。