2024年5月場所個別評価 照ノ富士

 今場所は休場明けとなったが2敗13休という成績に終わった。初日は大の里に掬い投げで敗れ、2日目に休場届を提出し、休場した。師匠の伊勢ヶ浜親方は「膝と脇の肉離れのような感じ。痛すぎて力が出ない状態で、咳をしただけで痛い」と説明した。膝は古傷であり、やはり左脇腹を痛めたことが大きかったようである。

 前兆はあった。春巡業に参加し、場所前も稽古はできていた。しかし5月2日の稽古総見で準備運動を始めた後に左脇腹に違和感が生じたので相撲を取る稽古には加わらなかった。その後は伯桜鵬に胸を出すなど調整はしていたようだが実戦稽古不足は否めず、場所2日前の5月10日に出場を決断した。

 ただ途中休場となった3月場所の時よりは巡業で稽古をしており、稽古がほとんどできなかった3月場所前よりはましなのではないかと私は思った。それでも脇腹の痛みで直前は思うような稽古ができなかったのは事実である。ということで師匠が言っていたように序盤がポイントだった。しかし結果として大の里に勝てず、休場となってしまった。これで休場は2場所連続21度目となり、横綱在位17場所目では10度目となった。

 場所後の横綱審議委員会では、少しでも本場所に出ようとした敢闘精神が評価され、9月場所までは静観する考えを示した。11月場所は九州場所で地方場所であり、横綱が進退を懸ける場所は東京場所が多い。ということで年内は引退勧告されずに済みそうである。結果論だが強行出場した甲斐があったようである。

 さて7月場所に向けてだが、5月場所後は巡業がない。部屋での調整は一見良さそうに見えるが、他の部屋の力士と手合わせができないという意味ではマイナスだと私は考えている。また7月場所は暑く、32歳のベテランにとっては厳しい環境となる。出てきて欲しい気持ちはあるが、体調が上向かずに休場ということも十分考えられる。厳しい状況だが今後の動向に注目していきたい。