貴景勝は横綱になれるのか? 意識の高さ、精神面の強さ その1

 この部分が貴景勝の魅力の一つである。仮に貴景勝が並の力士の意識なら私は横綱に上がれるとは言わない。確かに身体能力に関して言えば背は低いし、リーチも短い。しかしその一方でスピードと瞬発力は持っており、相撲に対する意識が非常に高い。特に驚くのが栄養に関してである。幼少期に栄養学に詳しい父が食べるものを厳格に選んでいたことが影響し、入門後は自身で身体作りのために栄養学を学んでいる。また11月場所千秋楽翌日の一夜明け会見で場所前に結婚していたことを明かしたが、結婚しても食べるものは自分が決めると話している。そして自身でパーソナルトレーナーを雇っており、トレーナーと相談しながら足りない筋肉を鍛えているようだ。このように貴景勝は何事も論理的に思考し、トライ&エラーを繰り返しながら自身の能力を向上させている。よって貴景勝の相撲はまだ完成形ではなく、横綱という地位だけでなく、完成形を求めて探求の旅を続けているものと思われる。

 また貴景勝は体が小さかった頃から「関取になる」と宣言していたが、周囲からは当初笑われたらしい。そして入門後は関取にはなれないと言われ、関取になったら幕内は無理、幕内になったら三役は無理、そんな風にずっと言われてきたみたいだ。しかしそれが悔しくて原動力となったようだ。確かに大関昇進までのスピードは速かったが、このコメントを聞くと決してエリートでなかったことが分かる。ある意味では心無い言葉を浴びせられ、逆境から這い上がってきた力士である。

続く