2024年3月場所個別評価 時疾風

 今場所は東十両筆頭であり、自己最高位となったが8勝7敗で勝ち越した。前半戦は4勝4敗で折り返した。そして後半戦も一進一退の星勘定が続き、7勝7敗で千秋楽を迎えた。千秋楽は勝ち越しと同時に新入幕が懸かる大事な一番となったが白熊を寄り切りで破り、来場所の新入幕をほぼ確実とした。

 さて時疾風の紹介をしたい。時疾風は宮城県栗原市出身で時津風部屋所属であり、年齢は27歳である。また身長179センチ、体重132キロであり、左四つ・寄り・上手投げを得意としている。東京農業大学出身であり、2019年3月場所で初土俵を踏んだ。同期には北の若などがいる。2023年5月場所で新十両となったが、新十両としては異例となる5本の化粧まわしが贈られており、地元・宮城県からの期待の高さがうかがえる。

 内容に関しては得意の左四つにこだわるのではなく、前に出る相撲で白星を挙げていた。少し前までは相手の懐に入ってからの上手投げが多かったが、今場所に関しては投げ技はほとんど見られなかった。そして押し出しで2番勝っているように前に出る圧力が増してきた。相撲の上手さは持っており、力強さが出てきたことは今後に向けてプラス材料である。

 好内容だったのは13日目の大翔鵬戦である。立ち合いからすぐに大翔鵬の懐に入り、モロ差しとなった。しかし大翔鵬は両腕を抱えて時疾風の寄りをこらえると右小手投げを打ったが時疾風が何とか残した。その後時疾風が再度寄り詰めるも大翔鵬は土俵際で左へ体を開いて右小手投げを再度打った。今度は時疾風の左足が浮いたものの再び着地させ、残すとすぐに左掬い投げを打ち、大翔鵬を這わせた。少し前ならおそらく負けていたと思う。そして踏ん張って勝ったあたりは地力強化を感じさせた。また足腰の良さが光った相撲内容だった。

 5月場所は新入幕となり、東前頭15枚目となった。力を付けてきており、勝ち越しを期待したい。また稽古相手であり、同じく農大出身の正代が喜んでいそうである。更に番付を上げれば正代も部屋頭を奪われかねないところまで来ている。よって自分のためだけでなく、正代のためにも頑張って欲しい。小兵力士であり、幕内に定着できれば人気が出そうである。また会見では1歳年下の女性との結婚を報告した。相撲より早く「金星」を獲得したが、今度は相撲での金星といきたい。それだけの能力は持っており、翠富士や翔猿のように上位力士を苦しめて欲しいというのが私の願いである。