2024年3月場所個別評価 貴景勝

 今場所は8勝6敗1休という成績だった。白星スタートも2日目は阿炎に上手投げで敗れて初黒星となった。そして5日目は熱海富士に敗れて2敗目となったが翌日からは連勝し、前半戦は6勝2敗で折り返した。後半戦は9日目に7勝目を挙げ、カド番脱出まであと1勝となった。しかし10日目からは3連敗し、勝ち越しを前に足踏みした。それでも13日目は琴ノ若に左上手を取られながらも執念の相撲で送り出しで勝ち、勝ち越しを決めると同時にカド番を脱出した。しかし取組中に右大胸筋を痛め、翌14日目から休場し、場所を終えた。

 場所前の二所一門の連合稽古を欠席し、首の状態が心配された。しかし場所直前の3月7日に出場を決め、師匠の常盤山親方は「先場所よりは首の状態もいい」と説明していた。そして内容に関しては頭からぶちかます相撲も見られ、本来の相撲もあった。ただ場所前の稽古不足は否めず、勝ち越しを前に3連敗したあたりはスタミナ不足を指摘されても仕方がない。とはいえ13日目は琴ノ若を破り、大関の地位は守った。

 問題は休場の原因となった大胸筋の損傷に関してである。以前は元大関の琴奨菊や豪栄道が大胸筋を痛めて苦しんできている。また回復するのに時間を要する箇所であり、両大関ともに痛めた方の腕を使えなかった記憶がある。カド番脱出は良かったと思うが、首に加えて大胸筋を痛めたということで大関の座を守るのが厳しくなってきた印象がある。場所後の春巡業も休場となった。

 当然5月場所に向けて部屋で準備することとなるが、カド番を脱出したので休場するという選択肢もある。ただ休場すると体力が落ち、筋力も低下するという懸念もある。どういった体調で迎えるかは分からないが、現時点では出場するかどうか難しい判断を迫られそうである。また大胸筋という箇所が厄介であり、本来の突き押し相撲が取れるかも心配される。少なくとも言えることは大胸筋の痛みとしばらくの間付き合っていかなければならないということである。自身だけでなく、師匠も大関の体調を見ながら出場の可否を判断することになりそうだ。