2024年3月場所を振り返って 優勝争い 13日目 尊富士ー若元春戦 大栄翔ー大の里戦

 3敗力士よりも先に尊富士が土俵に上がった。相手は関脇若元春である。実力者であり、改めて真価が問われた。しかし結果は尊富士の圧勝だった。立ち合いから頭でぶちかますと右はおっつけ、左は差す形であおって寄り立てた。しかし若元春も左は差しており、左四つ十分の力士なので上体を起こされかけた。しかし尊富士は休まない。左から掬い投げを打つとがぶるような形で一気に寄り切った。

 負けた前日は横綱から電話がかかってきたようである。そして激励だけでなく、技術的なアドバイスももらった。「上位陣には立ち合いだけじゃ通用しない。少しでも技術で勝てるように」という助言だった。また相手の体勢を崩すことに意識を集中させた。

 仮に一息つけば若元春が有利な体勢に持って行くのは目に見えており、そうなる前に勝負を付けたのは見事だった。またこれは以前優勝争いを演じた同部屋の熱海富士にも言えることだが、横綱の進言を理解し、自身の相撲に活かせているのが素晴らしい。勿論出足の良さが最大の武器だが頭もいい力士である。

 その後は3敗力士が相次いで土俵に上がった。大の里は大栄翔との取組だった。立ち合いから大栄翔がのど輪で突き起こすも大の里がのど輪を左手で跳ね上げた。そして大の里が右へいなすと大栄翔はあっさりと土俵を割った。決まり手は叩き込みだった。もう少し激しい攻防を期待していたが、あっけなく勝負が付いたという印象である。また新旧交代を思わせるような相撲内容だった。大の里は先場所より明らかに強くなっており、対策も練ってきている。一方大栄翔は負け越しが決まった。残り2日あり、あと一番負ければ三役を守るのが厳しい星勘定になってきた。  

続く