2024年1月場所個別評価 琴ノ若

 今場所は13勝2敗の好成績で初となる技能賞を受賞した。また優勝すれば殊勲賞受賞だったが優勝決定戦で照ノ富士に敗れたため受賞を逃した。それでも千秋楽に勝ち、大関昇進の目安となる直近3場所の通算勝ち星が33勝をクリアしたため、臨時理事会が招集され、場所後の大関昇進が決定的となった。そして1月31日に行われた3月場所の番付編成会議と臨時理事会を経て全会一致で大関昇進が決まった。また改名はせず、大関・琴ノ若で3月場所を務め、翌5月場所から祖父の四股名だった「琴櫻」を名乗る予定である。

 初日から白星を並べ、大関昇進に向けて好スタートを切った。しかし6日目は若元春に敗れて初黒星となった。その後は再び白星を重ねると10日目は新入幕の大の里の挑戦を退け、優勝争いで初めて単独トップに立った。しかし13日目は照ノ富士に敗れ、優勝争いでトップに並ばれた。終盤2日間は白星で締めたが横綱も譲らなかった。結局決定戦も照ノ富士に敗れ、初優勝はお預けとなった。

 内容に関しては場所を通して相撲に安定感があり、関脇でありながら大関のような相撲を取っていた。馬力が付き、土俵際まで押し込まれなくなったのが大勝ちの要因である。押し込まれさえしなければ差し身の良さ、おっつけの上手さなど技の引き出しが多いので対応力が活きてくる。また先場所までなら一番か二番くらい雑な相撲を取ることもあったが、今場所はそれが一番も見られなかった。技量だけでなく、精神面も成長してきている。

 今場所は結果として照ノ富士一人に優勝を阻まれた格好となった。また横綱戦を通して立ち合いの当たりの強化と馬力の更なる強化という新たな課題が突き付けられた。またこの課題を克服できたら横綱に上がれるということである。しかしこの課題は一場所や二場所でクリアできる問題ではない。私は横綱に上がれる能力は持っているものの、上がるには少し時間がかかると見ている。それでも以前に比べたら立ち合いの当たりはかなり鋭くなっており、課題を克服してきているのも事実である。そして相撲の取り口もまだ完成されておらず、成長が見込めそうだ。

 3月場所は晴れて新大関となるが、まずは大関という地位に慣れていきたい。霧島は新大関の場所は6勝7敗2休で負け越しており、豊昇龍は新大関の場所は千秋楽に勝って辛うじて勝ち越しを決めている。新大関として場所前の行事が多い上に対戦相手のマークがきつくなるのもあり、簡単にはいかないことが予想される。しかし琴ノ若にとっては祖父の元横綱・琴櫻が通ってきた道でもある。いろいろなことを経験しながら強くなっていって欲しい。そしていずれは横綱・琴櫻の誕生を期待したい。