2024年1月場所個別評価 貴景勝

 今場所は2勝2敗11休という成績に終わった。連勝スタートも2日目の熱海富士戦で右を差した際に右腕を痛めたようだ。勝ち残りの土俵下で右腕を気にする素振りを見せていた。そして3日目は若元春に突き出しで敗れたが右が全く使えないといった内容だった。結局4日目から休場し、3月場所は8度目のカド番となった。

 場所前から体調が懸念されていた。場所前の二所一門連合稽古は首痛で不参加であり、その後の横綱審議委員会による連合稽古は参加したものの首を気にする仕草が見られ、動きに精細さを欠いた。その後も稽古ができないまま本場所を迎えており、流れ的にも仕方がない結果と言える。

 深刻なのは首の痛みが原因で右腕に力が入らないということである。突き押し一本の力士なのでこれではまともに相撲が取れる訳がない。また基本的にはぶちかましてからの左右へのいなしが身上の力士であり、首痛が完治しないことを踏まえると厳しい状況に追い込まれた印象は否めない。

 1月場所は力士にとっては正月であり、巡業はないが2月11日に行われた大相撲トーナメントには参加したようである。取りあえず動かせる体ではあると言ってもいいのかもしれない。

 3月場所はカド番だが、まずは乗り越えられるかどうかに注目したい。ただ去年の9月場所は膝の痛みを抱えながらカド番を脱出しただけでなく優勝を果たしており、追い込まれた時に力を発揮するタイプである。その意味ではフタを開けてみなければ分からない部分はある。その一方でカド番を脱出できないだけでなく、首痛が原因で引退に追い込まれる可能性もある。それでも大関の座を27場所守ってきており、簡単に大関の座を明け渡すとは私には思えない。確かに危機的な状況ではあるが、そういった荒波を幾度となく乗り越えてきているだけに今後の動向から目が離せない。