2024年1月場所個別評価 豊昇龍
今場所は10勝4敗1休という成績だった。4連勝スタートを切ったが5日目は豪ノ山に一気に寄り切られて初黒星を喫した。翌6日目は阿炎に引き落としで敗れて連敗となった。それでも7日目からは白星を並べ、2敗を保って優勝争いに加わった。しかし13日目は霧島との2敗対決に敗れて3敗となり、優勝争いから大きく後退した。また敗れた際に痛めていた右膝を悪化させ、翌日から休場となった。
内容に関しては右膝を痛めている中での土俵だったが、その割には相撲に安定感があった。そして力強さが出てきた。驚いたのが3日目の宇良戦である。左を深く差された時に私は負けたと思った。しかし右上手を取ると宇良の切り返しをこらえた。その後左からの掬い投げで宇良を裏返しにした。負けた後に宇良がびっくりしたような表情をしており、それが全てを物語っていた。おそらく宇良は左を深く差した時点で勝利を確信したのだと思う。しかし豊昇龍は宇良の攻めに落ち着いて対処した。大関には失礼かもしれないが、恐るべき身体能力である。また関脇以下とは力の差が広がっているのが分かる一番でもあった。
負けた相撲に関しては豪ノ山戦は立ち合いから左上手を取るも右を差され、構わず一気に寄り切られた。確かに大関として負け方は良くない。しかし右膝を痛めており、踏ん張りが利かなかったというのもありそうだ。阿炎戦は阿炎のもろ手突きからののど輪押しに対応できなかった。右から引かれると踏ん張れず、両手をついてしまった。霧島戦は右上手を取り、十分な体勢を作ったかに見えた。しかしまさかの二枚蹴りで転がされた。結果から見ると霧島の誘いに乗ってしまったことが敗因のように見えた。霧島は綱取りが懸かっており、執念で相手の方が上回ったということだと思う。
終盤の休場は残念だったが、それでも二場所連続で10勝を挙げており、着実に力を付けているのは明らかである。また星数だけでなく相撲内容も良くなっており、今後に向けて期待が持てる。そして右膝の状態も大事には至っておらず、2月11日に行われた大相撲トーナメントでは初優勝を果たした。稽古再開は遅れるみたいだが3月場所に関しては問題なさそうである。
ということで3月場所は2回目の優勝を狙いたい。横綱は体調に不安を残し、霧島は綱取りを逃したということでモチベーションが下がっている可能性がある。また琴ノ若は新大関であり、行司の参加などで大変なので優勝争いまではいかないと見ている。貴景勝はカド番であり、おそらく周囲を見渡している余裕はない。よって状況的には絶好のチャンスである。そして優勝すれば綱取りとなり、霧島に先んじて横綱に上がれる可能性もあるので期待したい。