2024年1月場所を振り返って 優勝争い 千秋楽 優勝決定戦 照ノ富士ー琴ノ若戦

 ということで照ノ富士と琴ノ若による優勝決定戦となった。両者ともに想定していたと思う。そして琴ノ若は初優勝が懸かる。ただ本割の相撲を観たら琴ノ若が横綱を倒す景色は私には見えなかった。再度横綱が勝つだろうと見ていた。そして注目は立ち合いである。横綱は自信を持って受けて立つことは予想できた。焦点は琴ノ若がどういう立ち合いを見せるかである。本割では両差し狙いの立ち合いを見せるも失敗し、負けている。よって左前廻しを狙い、横綱の動きを止めにいくという選択肢もある。そして横綱が勝つ可能性が高いにしても琴ノ若が本割での負けを踏まえ、どのような相撲を取るか?。私は結果以上にその内容に注目していた。

 相撲は横綱が本割同様、左前廻し狙いだったのに対し、琴ノ若も本割と同じく両差しを狙った。そして本割とは違って立ち合いの圧力が強かったので両差しに成功した。その後前に出たものの横綱の対応力が凄かった。まずは左から小手に巻いて振ると圧力を掛けながら右を差した。琴ノ若は引いて頭を付け、体勢を立て直そうとした。しかし照ノ富士は一瞬の隙を見逃さず、今度は左も巻き替えた。これで逆に横綱が両差しの形となった。その後左下手を取ってじわじわ寄り、最後はあおるような形で寄り切った。両者が力を出し合った相撲内容に取組後は館内から大きな拍手が起こった。

 まずは琴ノ若からである。再度両差し狙いの作戦は悪くなかった。そして本割での反省を生かして全力でぶつかり、二本差すところまでは持ち込んだ。しかし寄り立てるところまではいかなかった。馬力が付いてきたとはいえ、まだ横綱を一気に寄り切る力までは備わっていないということである。今後に向けては立ち合いの強化と馬力の強化という明確な課題が出た。優勝したかったとは思うが、横綱が初優勝に立ちはだかった格好となった。この悔しさをバネに今度こそ初優勝といきたい。また琴ノ若のコメントを見ると頭の中のほとんどが初優勝であり、大関昇進はほとんど意識していなかったことが分かる。しかし結果として大関昇進は手繰り寄せた。心からおめでとうと言いたい。

 一方の横綱は復活優勝となったが、腰の痛みを抱えた中でよくここまで立て直したと思う。決定戦も琴ノ若を受けて立ち、攻めさせたうえで反撃し、最後は寄り切った。これぞ横綱相撲である。またそれだけ勝つ自信があったということである。霧島戦は立ち合いから相手の右を手繰っており、警戒していたのが琴ノ若戦との差である。いずれにしても霧島と琴ノ若の前に壁として立ちはだかったのは事実である。また簡単には上には上がれないというメッセージでもある。これが横綱の務めとはいえ、体を張って横綱としての威厳を示したことに私は頭が上がらない。そしてこれが今後の二人のためにもなるはずである。その意味では横綱の優勝は最高の結末だったと言えるのではないだろうか。

終わり