2023年11月場所個別評価 大栄翔

 今場所は9勝6敗という成績だった。4連勝スタートも中盤は負けが込み、9日目で4敗となったことで場所後の大関昇進の可能性は消滅した。しかし10日目からは巻き返し、12日目に勝ち越しを決めた。その後14日目は苦手の貴景勝を突き出し9勝目を挙げるも千秋楽は豊昇龍に敗れ、二桁白星はならなかった。

 内容に関しては序盤は落ち着いて相撲を取っていた。しかし中盤の4敗はいずれも相手の引き技を食っての黒星だった。内容も良くなく、その後崩れてもおかしくない展開だったが持ち直したあたりは地力がある証拠である。一山本戦、翠富士戦は格の違いを見せつけており、やはり大関候補である。ただ大関昇進となるとやはり場所を通しての相撲の安定感が欲しいところだ。

 さて今年の大栄翔を振り返ると平幕は1月場所のみであり、3月場所以降は全て三役での土俵となった。その三役でも5場所中3場所で二桁勝利を挙げており、実力の高さは誰もが認めるところである。また去年も平幕は一場所だけで関脇二場所、小結三場所を務めている。この状況は大関昇進を前に関脇で足踏みした豪栄道や御嶽海の時とよく似ている。審判部は来場所の琴ノ若の大関獲りを明言したが大栄翔の可能性もほのめかしており、ハイレベルな成績を残せば過去の実績を評価しての大関昇進も十分あり得る。

 ということで来場所も大関昇進の可能性がある場所となりそうだが、今年一年は大関に向けて頑張っているはずであり、その疲れが少し心配である。私としてはまずは勝ち越し、次は二桁勝利を目指すくらいの気持ちで臨んで欲しいと思っている。やはり関脇の地位を守ることが大事であり、それを忘れてほしくない。そして関脇の地位を保った上で相撲が上手くかみ合えば上に上がれると思う。年齢は30歳で経験を積んでおり、あとは流れが向くかどうかといったところである。現時点では大関の可能性は半々であり、その意味でも来年大関に上がれるか注目である。