2023年11月場所を振り返って 十両優勝に関して 大の里 琴勝峰

 十両の優勝争いは琴勝峰と大の里のマッチレースとなり、優勝決定戦となったが琴勝峰が上手投げで大の里に勝ち、3度目の十両優勝を果たした。成績は12勝3敗だった。しかし今場所も先場所同様、大の里が主役だった。先場所十両優勝の一山本と同じく、意地とプライドで大の里の優勝を許さなかったという構図も一緒である。今場所も立ち合いからの体当たりで圧倒していた。十両では実力上位の大奄美、水戸龍といったところも危なげなく料理しており、十両で取る力士ではない。一番驚いたのが2日目の大翔鵬戦である。取り直し後の一番だったが立ち合いからすぐに右を差すと左はハズの形で一気に押し出した。これぞ電車道と行った相撲だった。大翔鵬は身長185センチ、体重196キロの巨漢力士であり、体格では大の里に負けていない。そして幕内を9場所務めた実績もある。そんな相手に有無を言わせない相撲で圧勝した。また来場所の新入幕を確実としたが幕内力士は十両力士よりも体が大きくなるので今まで以上に遠慮なくぶつかれる。それを思うと今から楽しみで仕方がない。技量の部分は分からないが立派な体格と立ち合いの馬力は絶対的な武器であり、スケール感は三役以上を目指せるものを持っている。熱海富士と並んで今後要注目の力士である。

 琴勝峰は今年1月場所で貴景勝と千秋楽まで優勝争いをしており、その意味では十両優勝で満足してもらっては困る力士である。以前は琴ノ若と並んで大関以上が期待されたが、琴ノ若とは大きな差がついてしまった。また師匠の佐渡ヶ嶽親方や部屋付きの粂川親方が指摘しているように、どんな相撲を取りたいのかが見えてこない。確かに十両優勝を弾みに再浮上を期待したいのだが、十両なので馬力で圧倒でき、優勝できたという部分もある。年齢は24歳と若いが同学年の豊昇龍は既に大関である。また豪ノ山、熱海富士、大の里など若手力士が伸びてきており、その点では厳しい立場に立たされていると言っていいと思う。個人的には今はライバル視するよりも、自分の相撲を一から見つめなおす良い機会だと考えている。潜在能力は高く、この壁を乗り越えての飛躍を待ちたい。