2023年11月場所を振り返って 優勝争い 12日目 熱海富士ー豊昇龍戦

 そして2敗のもう一人の熱海富士は豊昇龍戦となった。自身初の結びの一番となった。こちらも注目の取組となったが立ち合いで熱海富士が僅かながら押し込んだ。しかし豊昇龍は右を差すと左はおっつけの形で一気に前に出た。すると熱海富士は土俵際で左に体を開いての突き落としを繰り出すと豊昇龍はたまらず転がった。これで熱海富士は対大関戦初勝利となった。そして2敗を守り、優勝争いに残った。一方豊昇龍は4敗となり、優勝はかなり厳しくなった。

 勝因は熱海富士が立ち合いで豊昇龍に圧力を掛けたことである。そのことで豊昇龍が慌てて前に出ることとなり、タイミング良く突き落としが決まった。しかし当の熱海富士は殊勲インタビューを受けても逆転勝ちだったせいか、時に首を振り、納得はしていないといった表情をしていた。大関に勝っただけで満足していないというのはやはり大物感がある。本当は前に出て勝ちたかったというのがインタビューを通して伝わってきた。

 一方豊昇龍は自ら頭で当たっていながら熱海富士に胸で受け止められており、元白鵬の宮城野親方が指摘したようにどちらが大関か分からないといった内容だった。馬力不足は明らかであり、今後は立ち合いの強化と増量が求められる。

 それにしてもこの一番は熱海富士が勝ったことで館内が非常に盛り上がった。豊昇龍は5日目の豪ノ山戦で立ち合いでなかなか立たず、取組後審判部に呼び出され、注意されていた。それもあり、豊昇龍がヒールの役割になった感がある。勿論熱海富士が期待の若手の日本出身力士というのもあると思う。いずれにしても初の結びで勝った熱海富士は凄いの一言である。

 12日目終了時点で2敗は霧島と熱海富士の2人、3敗は琴ノ若と一山本の2人となった。内容的にも2敗の二人のマッチレースの様相を呈してきた。

続く