目指すは大関! 豪ノ山 師匠の元豪栄道について 引退に関して

 2020年1月場所は9度目のカド番となったが12日目に負け越し、大関陥落が決定した。しかし気力は衰えておらず、負け越しが決まった後も出場し続けた。その後場所後の1月27日に引退届を提出し、年寄「武隈」を襲名することが臨時理事会で承認された。記者会見では「自分勝手なわがままで、引退させてもらった」と語り、周囲の説得を押し切っての引退であったことを明かした。次の3月場所はご当所の大阪場所である。師匠をはじめ、関係者が引き止めるのは当然である。しかし「気力のない相撲を皆さんの前で取るわけにはいかないと思った」と語った。大関という地位に身を捧げていたことの裏返しだと私は考えている。

 最近は大関から陥落しても相撲を取り続ける力士がほとんどだが、私的には見事な引き際だったと思っている。ちなみに大関在位33場所は歴代10位の長命だった。確かに二桁勝利の回数が少ないという点では名大関とまでは言えない。しかし周囲から批判されても大関の座にしがみつき、5年半守ってきたというのは評価できる。

 そして豪栄道は愚痴は一切こぼさず、怪我をしても対戦相手に弱みを見せたくないということで何も言わない人だった。あまりに何も言わないので休場した時は本人に代わって師匠の境川親方が説明することもあったくらいである。現代には合わないが、男は黙って・・・というのを地で行くタイプの人間だった。また以前から親しかったということで豪ノ山も師匠の生きざまを見てきているはずである。潔い形で引退しており、こういった形の辞め方は指導者としての発言に説得力が増すと思う。豪ノ山も是非、師匠を見習ってほしい。

続く