2023年9月場所個別評価 大の里

 今場所は東十両14枚目で新十両の場所となったが12勝3敗の好成績だった。初日から白星を並べ、中日勝ち越しを決めると9日目は千代丸を寄り切りで破り、史上3人目となる新十両力士の初日から9連勝を決めた。しかし10日目は一山本に敗れて初黒星。新十両の連勝記録更新はならなかった。12日目は北の若との同学年対決に敗れて2敗目。それでも14日目は東白龍に勝って12勝目を挙げ、一山本が敗れたので優勝争いでトップタイに並んだ。しかし千秋楽は新入幕が懸かった狼雅に掬い投げで敗れ、一山本が勝ったため優勝を逃した。

 それでは大の里の紹介をしたい。大の里は石川県出身で二所ノ関部屋所属であり、年齢は23歳である。そして身長193センチ、体重175キロの恵まれた体格であり、突き・押し、右四つ、寄りを得意としている。日体大では学生横綱、アマチュア横綱など数々のタイトルを獲得し、幕下十枚目格付出で今年5月場所にデビューした。大学での実績、立派な体格などを見れば大卒力士としては日本出身力士では久々の大物と言っていいと思う。勿論三役やその上が期待できる力士である。相撲の取り口は突き押しと右四つの相撲が主体だが、左四つでも相撲は取れるみたいだ。しかし師匠の元横綱稀勢の里からはとにかく前に出る相撲を取るように言われているのだろう。馬力があり、突き押しに威力があってそのまま運べるので四つ相撲を取る必要がないといった感じだった。

 内容に関してはもろ手突きと右差しの相撲で白星を挙げていた。特にもろ手の圧力は凄く、ほぼほぼ立ち合いの一撃で勝負を付けるといった相撲も多かった。13日目の欧勝馬戦はもろ手突きから突き放してそのまま押し出した。翌14日目の東白龍戦はもろ手突きから左のど輪を入れるとそのまま土俵下まで押し倒した。相手は来場所新入幕の力士である。今の位置ではモノが違うのは言うまでもない。一方負けた相撲に関しては相手に上手く立ち回られた印象が強い。土俵際までは攻めており、相手が大の里の攻めを何とか凌いだという感じである。前に出て負けたという点では悪い相撲とは言えず、経験を重ねながら相撲を覚えていって欲しい。

 九州場所は東十両5枚目という番付となった。大勝ちすれば新入幕が見えてくる位置である。ただデビュー4場所目であり、期待の大物ではあるものの大卒力士の割には相撲の完成度は高くなく、まだまだこれからという力士である。来場所も今場所同様、自分の力を試すような相撲を取ればいいのではないだろうか。番付は自ずと上がると思うので今は本場所よりも稽古の方が大切である。そして将来的には今場所初日の朝紅龍戦のように立ち合いで押し込んでから差して組み止めるといった相撲になりそうである。いずれ壁にぶつかると思うが、前に出る姿勢を忘れず、大きく育って欲しい力士である。