2023年9月場所個別評価 阿炎

 今場所は東前頭2枚目だったが9勝6敗という成績だった。前半戦は一大関二関脇を倒す活躍を見せ、4勝4敗で折り返した。そして後半戦は連勝し、12日目に勝ち越しを決めた。その後は連敗したが千秋楽は北勝富士を叩き込みで破り、三役復帰に向けて大きな9勝目を挙げた。

 内容に関しては前半戦はのど輪押しが効いていた。3日目の大栄翔戦は下からあてがわれるも構わず一気に押し出した。また若元春戦と霧島戦はともに決まり手は引き落としだが押し込んでからの引き技であり、内容としては悪くなかった。しかし後半戦は隆の勝戦、遠藤戦、そして熱海富士戦でいずれも立ち合いで左に変化していた。特に熱海富士戦は相手が優勝争いをしており、注目の一番だったので取組後八角理事長が苦言を呈していた。確かに一場所で三番も立ち合いで変化するのは明らかに多すぎる。しかし前半戦とは違って押し込む相撲が少なくなっており、肘を痛めていた可能性が高い。その証拠に場所後の秋巡業は右変形性肘関節症で休場している。特に熱海富士戦は相手は売り出し中の若手力士であり、受けて立つくらいの気持ちが欲しかったところだ。しかし変化に関しては単に白星が欲しいだけでなく、何らかの理由があるというのは観る方は頭に入れた方がいいのかもしれない。結果に対しての責任は誰も取ってくれない。万全ではない状態の中で三役復帰に向けて最善を尽くしたという印象である。そして千秋楽に勝ち、来場所の三役復帰が有力となった。

 九州場所は小結となりそうだが勝ち越しを目指したい。しかし今場所の相撲内容では三役の地位を守るのは難しい。また秋巡業を休場しており、肘の状態を良くすることが最優先である。本来ならのど輪押しでそのまま相手を土俵の外に出したいところだがそういった相撲が少なくなっている。今の相撲では三役と平幕の往復が続きそうな気がする。ファンとしては照ノ富士と優勝争いをした頃のような相手を一気に持って行くのど輪押しの相撲をもう一度観たいところだ。