2023年9月場所を振り返って 優勝争い その12

 さて決定戦となったが、まずは両者を責める訳ではないが、3敗で踏み止まって欲しかったというのが正直なところである。4敗で優勝してもその価値が・・・ということにもなってしまう。それだけ今場所は混戦だったということである。決定戦は私は熱海富士が少しだけ有利だと思っていた。確かに実績と経験は大関の方が上である。しかし貴景勝は膝を痛めての休場明けであり、続けて二番は取りたくないというのが本音である。一方熱海富士は若さと勢いがあり、稽古も十分である。スタミナも全く不安がない。そして貴景勝とは本割で対戦しており、策は練っていたものと思われる。

 そして相撲は立ち合いで熱海富士が先に手を付くも貴景勝はなかなか手を付かず、一回待ったした。その後二回目で立ったが貴景勝は当たらずに左へ体を開き、そのまま叩き込んだ。注文相撲である。私は仕切りの時から何かあるかもしれないと思った。それは時間前の仕切りから貴景勝の顔がいつになく険しかったからである。今思えば改めて変化する覚悟を決め、腹をくくっていたのかもしれない。批判覚悟のうえで貴景勝は優勝という結果を取りに行った。確かに貴景勝は勝たなければならない理由がたくさんあった。優勝して大関の面目を保ちたい、優勝して来場所の綱取りにつなげたい、大関が再入幕の若手力士に負ける訳にはいかない、しかも本割では押し込まれている、休場明けなので二番相撲を取るのは体力的にきついなど、何が何でも結果が欲しいという条件が揃っていた。しかしそれでも頭から当たって欲しかったというのが私の意見である。また頭から当たっていればその後で変化しても批判は少なかったと思う。相手は経験の浅い若手力士であり、熱海富士の当たりを受け止めるくらいの度量が欲しかったところだ。そして協会審判部はそういったところを含めて評価するはずである。本来なら二場所連続優勝もしくは優勝に準ずる成績が綱取りの条件となるが、取組後佐渡ヶ嶽審判部長の口からは綱取りという言葉は一度も出てこなかった。

続く