2023年7月場所個別評価 翔猿

 今場所は西前頭筆頭だったが9勝6敗で勝ち越した。初日から役力士との対戦が続いたが3日目は照ノ富士を寄り切りで破り、自身二つ目の金星を獲得。そして5日目は新大関霧島に勝つなど健闘し、4勝4敗で折り返した。そして後半戦も勝ったり負けたりが続いたが14日目に勝ち越しを決めた。千秋楽は琴恵光を送り出しで破り、9勝目を挙げると同時に9月場所での三役復帰が濃厚となった。

 内容に関しては押し相撲と相手の懐に入る相撲で白星を挙げていた。やはりまず取り挙げたいのが3日目の照ノ富士戦である。照ノ富士に右を深く差されたものの、下がりながら巻き替えて残すと右下手を浅く取り、頭を付け、横綱の重心を高くした。その後蹴返しは決まらなかったものの照ノ富士がバランスを崩し、最後は照ノ富士が呼び込んだところを寄り切った。56秒の長い相撲だったが翔猿は終始動き回っており、よく動きを止めなかったと思う。取組後照ノ富士は膝がグラグラしていたが、翔猿も極度の疲労で視野がおぼつかなかったようだ。また翔猿は「ユルフン」を含めてあらゆる手段を使って横綱を攻め、勝ちに結び付けたということで凄い一番だった。「ユルフン」に関しては大抵の力士は対戦相手によって廻しを緩めたりしており、作戦の一つである。確かに見映えはしないが、それ自体は否定されるものではないと私は考えている。

 また終盤二日間は平幕下位の力士が相手だったが白星を挙げ、地力の高さを示した。終盤に白星を重ねられるというのはしっかり稽古をしている証拠である。

 9月場所は3場所ぶりの三役復帰となるが、三役で初めてとなる勝ち越しを狙いたい。内容的には前に出て勝つ相撲を増やす一方、簡単に押し出される相撲も多いので一番でも減らしたい。また今場所同様、初日から上位力士との対戦が続くのでどれだけ勝てるかがポイントになりそうだ。そして動き回り、館内のお客様を沸かせるような相撲を期待したい。