2023年7月場所を振り返って 優勝争い その10
そして優勝決定戦である。本割では12日目に対戦があり、北勝富士が豊昇龍を押し出しで破っている。普通に考えれば豊昇龍は役力士として平幕相手に続けて負ける訳にはいかない。しかし豊昇龍は伯桜鵬戦同様、非常に落ち着いていた。相撲は北勝富士が頭から当たって押すも豊昇龍は正面から受け止めた。ただ豊昇龍は廻しは取れず、押し合いの攻防となった。しかし北勝富士は豊昇龍に懐に入られそうになったところでまともに引き、そこを豊昇龍が一気に押し出した。豊昇龍は本割の相撲では引く動きを見せ、そこを上手くつけ込まれて負けている。その反省を活かし、決定戦では余計な動きは全く見せなかった。もっとも豊昇龍は廻しを取ってこそという力士ではなく、押し相撲も取れるので相撲にゆとりを感じた。簡単に言えば押し込まれなかったことが勝因である。一方北勝富士は相手を押し込めなかったことが全てである。ただ自分の相撲は取れており、相手の方が一枚上手だったということだと思う。
これで豊昇龍が初優勝を果たすと同時に場所後の番付編成会議で大関昇進が決まった。当然の結果ではあるのだが、14日目終了時点では大関昇進への気運は高まっておらず、千秋楽の相撲だけで大関昇進が決まった感じもする。そして優勝インタビューで本人が言っていたように大関に関してはあまり意識していなかったように思われる。勿論優勝に関しては文句は全くないのだが、大関昇進に関しては上手くチャンスをモノにしたという印象がある。そのあたりが豊昇龍らしさでもある。しかし運も実力のうちである。過去には実力はあっても運に見放され、大関昇進を見送られた力士もいる。その意味では一回のチャンスをモノにした豊昇龍は立派である。
終わり
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