2023年5月場所個別評価 御嶽海

 今場所は西前頭6枚目だったが9勝6敗という成績で7場所ぶりの勝ち越しとなった。番付を下げ、上位総当たりの地位から外れたが前半戦は5勝3敗で折り返した。そして後半戦は13日目に大栄翔を寄り倒しで破り、勝ち越しを決めた。千秋楽は正代との元大関対決を制し、9勝で場所を終えた。

 まずは連続負け越しを止め、本人はホッとしていると思う。大相撲は連続勝ち越しで番付を上げる力士がいる一方、連続負け越しで番付を下げていく力士も多くいる。そしてどんなに実力、実績があってもこの流れを止めるのは難しく、苦労している力士もいる。強い弱いは別にして、まずは大相撲はそういう世界だと認識をすることが大切だと私は思っている。御嶽海は連続負け越しを止めたところで一区切りといったところである。

 さて内容に関しては御嶽海らしいと言ってしまえばそれまでだが、相撲に安定感が欠けているのは相変わらずである。2日目の北勝富士戦は立ち合いから押し込まれ、まともに引き、軍配も北勝富士に上がったが北勝富士の体も飛んでおり、同体取り直しとなった。そして取り直しの一番も引いたところを押し込まれたが挽回し、今度は相手が引いたところを寄り倒した。引きたいところを思い直して攻めたというのが観ていて分かる一番だった。また8日目の阿武咲戦は立ち合いで左に動き、左上手を取りに行くも失敗し、渡し込みで敗れた。私とすればこういった内容の相撲を減らしてほしいのだが、年齢は30歳であり、もう変わらないと思う。その場その場で自分の弱さと向き合っていくしかない。

 一方で終盤は大栄翔と正代を破り、役力士に勝ったことで存在感を示した。元大関であり、自分の形に持ち込めれば上位力士に勝てる力は十分ある。

 7月場所は西前頭2枚目となり、上位総当たりの番付に戻った。目指すは勿論三役復帰である。そのためには一人でも多くの役力士を倒す必要がある。確かに若手力士が力を付けてきているのは事実だが御嶽海が衰えたとは思わない。まだ上位力士に勝てる力はある。また三関脇が大関獲りであり、対戦があると思うので元大関としての意地を見たいところである。