2023年5月場所個別評価 貴景勝

 今場所はカド番の場所だったが8勝7敗で勝ち越した。前半戦は6勝2敗で折り返したが初日の阿炎戦は立ち合いで左に動いての白星。そして4日目の遠藤戦は立ち合いで左への変化ということでなりふり構わずの相撲で後半戦を迎えた。そして後半戦は9日目、10日目といずれも平幕相手に連敗し、勝ち越しに向けて暗雲が漂い始めた。しかし11日目に大栄翔を引き落としで破ると13日目は明生を送り出しで破り、勝ち越しを決めた。そしてこの一番も立ち合いで当たってからの左変化であり、明生が前日に左膝を痛めており、助けられた部分もあった。残り2日は黒星で場所を終えた。

 内容以前に休場した3月場所後の調整が遅れており、報道陣の前で関取相手に相撲を取ったのは5月4日の稽古総見が初めてだった。そして場所後に語っていたが、5月場所に向けて急ピッチで調整する中で右膝を悪化させたようだ。3月場所では左膝を痛めて途中休場しており、調整が間に合わなかったということである。初日の阿炎戦は勝ったものの取組中に右足を浮かせており、右膝を再度痛めたみたいだ。そして2日目からは両膝にテーピングを施して土俵に上がっていた。この状態では自分の相撲が取れる訳がない。大関の地位を守るために必死に土俵を務め、大関の地位を守ったというのが全てである。

 7月場所に向けては膝の状態をどこまで戻せるかが重要である。また3月場所が綱取りの場所であり、しかもご当所場所での途中休場ということで結果を残せなかっただけでなく、地元ファンの期待を裏切る結果にもなってしまった。おそらく心身ともにピークに持って行ったと思うので今はなかなか辛い状況である。しかし時は待ってくれない。新大関霧島が誕生し、7月場所は三関脇が揃って大関獲りである。他にも朝乃山や若手力士が控えており、ともすれば大関の座を追われかねない状況である。体と気持ちの立て直しは大変だと思うが、もう一回立て直して大関としての役割を果たすことを期待したい。