2023年5月場所を振り返って 三賞など

 三賞は唯一照ノ富士に土を付け、金星を挙げた東前頭6枚目の明生が初の殊勲賞を受賞した。技能賞は場所後の大関昇進をほぼ確実にした関脇霧馬山が3場所連続3度目の受賞となった。もう一人の技能賞は関脇若元春であり、若元春は三賞が初受賞となった。なお敢闘賞は関脇豊昇龍や平幕の朝乃山などが千秋楽で勝った場合という条件付きで候補に挙がったが、いずれも出席委員の過半数の得票に至らず、受賞者なしに終わった。

 そして凄かったのが十両の優勝争いである。14日目まで1敗で並んでいた豪ノ山と落合がともに千秋楽の本割の相撲に勝ち、14勝1敗同士の優勝決定戦となった。過去に十両で14勝以上での優勝は33例あるが、14勝同士の決定戦は史上初であり、最もハイレベルな優勝争いだった。ちなみに熱海富士は13勝を挙げながら優勝争いに加われなかったことになる。異例としか言いようがない。そして決定戦は豪ノ山が立ち合いから頭でぶちかまし、馬力相撲で一気に押し込むと落合に土俵際で弓なりになって粘られるもそのままの勢いで押し出し、落合は土俵下まで吹っ飛ばされた。豪ノ山は大学相撲出身で25歳、一方落合は高校相撲出身で19歳であり、先輩力士としての意地を見せた格好である。番付は東十両筆頭なので7月場所での新入幕はほぼ当確である。馬力を活かした突き押し相撲が持ち味であり、廻しを取っても相撲が取れる。しかし身長は177センチと高くはなく、廻しにこだわらない相撲を期待したい。また優勝は逃したものの、落合も7月場所での新入幕が有力である。一応は左四つの相撲がメインだが突き押しもでき、相撲センスの塊のような力士である。まだ19歳であり、今後どのように成長していくかが非常に楽しみである。