2023年5月場所を振り返って 優勝争い その６
13日目。照ノ富士は朝乃山との割が組まれた。照ノ富士は霧馬山の他に貴景勝、大栄翔との対戦を残しており、14日目は霧馬山との取組が決まったので貴景勝戦、大栄翔戦のどちらかが組まれないことになった。また朝乃山は元大関とはいえ東前頭14枚目であり、力量を評価しての抜擢と言える。
相撲は朝乃山が立ち合いから左からおっつけ、一気に前に出た。しかし照ノ富士は朝乃山の左を抱えると小手投げで転がした。朝乃山は見せ場は作った。しかし結果的には照ノ富士の完勝だった。これで照ノ富士が1敗を守った一方、朝乃山は3敗に後退し、優勝がかなり厳しくなった。
ただ結果は別にして、朝乃山は対照ノ富士戦で進境を見せた一番でもあった。大関だった二年前までは右四つに組み合い、技術は圧倒的に照ノ富士の方が上なので相撲を取らせてもらえなかった。しかし今回は立ち合いから頭で当たり、四つにはこだわらず、前に出て横綱を後退させた。結局その後体を寄せられず、投げられたわけだが朝乃山が幕内上位と当たる体力がまだついていないうちに幕内復帰しているのは確かであり、その意味では結果に関わらず横綱と対戦できたというのはラッキーだったと思う。そして個人的には朝乃山には右四つの相撲だけでなく、照ノ富士戦のようにおっつけて前に出る相撲を増やしてほしいという考えである。
また2敗の霧馬山は入幕二場所目で売り出し中の北青鵬との対戦だった。勿論初顔合わせである。その点では霧馬山にとっては嫌な相手である。相撲は立ち合いから霧馬山が右手を出し、左上手を取って右四つに組み止めた。そして肩越しで北青鵬に左上手を取られかけるもそれを許さない。その後霧馬山は出し投げを打ち、頭を付け、左上手を許さないような体勢を作った。北青鵬は右下手一本だが、右下手だけでも相撲が取れるタイプであり、霧馬山も油断はできない。結局1分以上の長い相撲となったが最後は右下手を切ると同時に左外掛けで転がした。北青鵬は長い相撲を得意としており、過去何人も攻めきれずに逆転負けしているが、しっかり料理したあたりは流石である。これで2敗を守るとともに3場所トータルの勝ち星が34となり、大関昇進がほぼ当確という数字となった。
13日目終了時点で1敗は照ノ富士、2敗が霧馬山となり、3敗の朝乃山も僅かながら可能性はあるが、優勝争いはほぼ二人に絞られたと言っていいと思う。そして14日目は照ノ富士と霧馬山の直接対決となった。照ノ富士が勝てば千秋楽を待たずして優勝が決まる。
続く