2023年5月場所を振り返って 優勝争い その5
12日目。1敗の照ノ富士は力を付けている若元春との対戦だった。相撲は立ち合いから若元春が押し込むも照ノ富士がすぐに左四つに組み止めた。ただ左四つは若元春得意の四つであり、照ノ富士得意の右四つではない。若元春が左下手を取った一方、照ノ富士は左下手を取るも切られ、そのタイミングで若元春は右上手を取って一気に前に出た。しかし照ノ富士は下がったタイミングで再度左下手を取り、土俵際で左下手投げを打って体を入れ替えると最後は寄り倒した。確かに若元春は力を付けていると思う。しかし左四つに組みに行ったのは横綱の方であり、左からの下手投げも想定の範囲内のように見えた。そう考えると見応え十分の相撲だったが主導権は横綱の方が握っており、力が一枚上だったということだと思う。
もう一人の1敗の朝乃山は大栄翔戦だった。相撲は立ち合いからの大栄翔の突き押しとのど輪押しを止められず、右へいなすもそのまま押し出され、2敗に後退した。前日の明生戦も土俵際まで攻め込まれており、その流れを考えれば負けたのは当然の結果と言える。ましてや大栄翔は大関候補である。大栄翔に負けたのが現在の実力と自覚し、稽古に励むしかない。
そして2敗の霧馬山は貴景勝戦だったが、立ち合いからすぐに右を差すと一気に寄り切った。2敗を守ると同時に白星を二桁に乗せた。これで場所後の大関昇進がほぼ確実となった。貴景勝が本調子でないとはいえ、押し込まれず、すぐに右廻しを取ったあたりに地力強化がうかがえた。二桁勝利という結果だけでなく、内容的にも大関に上げてもいいという相撲だった。
12日目終了時点で1敗は照ノ富士一人となり、2敗が霧馬山と朝乃山の二人となった。横綱が単独トップに立った一方で2敗力士との直接対決が残っており、2敗の二人が横綱に勝てるかどうかが焦点になってきた。
続く
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