なぜ霧馬山は大関に上がれたのか? 鶴竜親方との出会い

 私的にはこれが一番大きかったと思っている。2019年9月に当時横綱だった鶴竜が井筒部屋閉鎖に伴い、陸奥部屋に移籍してきた。当時は霧馬山の稽古相手だけでなく、指導役の誕生に喜んだ記憶がある。そして土俵での稽古だけでなく、食事稽古も課され、丼飯3杯を食べることを指導された。食べ終わるまで鶴竜が見守ったようだ。その効果はすぐに表れた。2019年11月場所では西十両5枚目で11勝4敗の好成績を挙げ、翌2020年1月場所では新入幕となった。そして新入幕の場所でも11勝を挙げ、初となる敢闘賞を受賞した。その後も平幕上位への定着は早く、このあたりは間違いなく鶴竜が来たおかげと言える。

 また師匠の陸奥親方は年齢が64歳と定年間近であり、27歳の霧馬山とは年齢が離れすぎている。その点で鶴竜親方は同じモンゴル出身というだけでなく、年齢が37歳と霧馬山に近いので霧馬山にとっては頼りになる存在なのではないだろうか。

 そして相撲に関しても鶴竜に教え込まれているのがよく分かる。鶴竜が最も得意としていた巻き替えがその最たる例である。また以前は安易に投げに行きがちだった取り口も「じっくりと腰を下ろして寄りなさい」と助言されたようだ。安易な投げは、それが続くと怪我にもつながってしまう。最近は投げに行く動きがほとんどなくなった一方、押されても我慢して残す相撲が増えた。

 今後は霧馬山が大関になったので助言は少なくなるのかもしれないが、霧馬山の相撲はまだ完成されておらず、その意味でも鶴竜親方の存在は心強い。大関昇進までの過程は少しずつ強くなっていったという点で鶴竜親方に似ており、鶴竜親方のようにもう一つ上の地位を狙いたい。

続く