2023年3月場所個別評価 豊昇龍

 今場所は10勝5敗という成績だった。連敗スタートも3日目からは巻き返し、前半戦は5勝3敗で折り返した。そして後半戦は連勝し、11日目に勝ち越しを決めた。12日目は霧馬山に敗れるも翌日からは連勝し、白星を二桁に乗せると同時に大関昇進への起点を作った。

 内容に関しては先場所中に左足首を痛め、休場したということで回復途上であり、前に出て勝った相撲は少なかった。それでも投げ技や横への動きで対処していたという印象である。特に良かったのが10日目の大栄翔戦と14日目の若元春戦である。大栄翔戦は右から張るも相手に右を差されることを見透かされた上で右から突き落とされそうになった。しかし突き落としをこらえるとすぐに体を寄せ、二本差して一気に寄り切った。喜んで前に出るのではなく、右から抱えて相手の動きを止めたあたりに地力が付いてきていることが分かる。若元春戦は立ち合いで右に動いて右上手を取り、右上手は絶対与えないという内容で最後は上手投げで転がした。豊昇龍は右四つが得意であり、けんか四つの相手だったが敢えて右上手を取りに行き、相手に左下手を取られても力を出させなかった。若元春は豊昇龍の右上手狙いは頭に全くなく、豊昇龍の作戦勝ちである。こういった相手の一枚上を行く策を取れるのが豊昇龍の特長である。

 来場所は二桁勝利、できれば11番以上勝って大関昇進への足固めをしたい。場所後の春巡業では稽古をしており、今場所以上にいい状態で場所を迎えられそうである。また左足首の状態が回復すれば去年の11月場所のように前に出て勝つ相撲が増えてくると思う。あとは来場所大関獲りの霧馬山、そして成績次第では大関昇進の可能性もある大栄翔と若元春は確かにライバルではあるが、現在は一横綱一大関で上位陣はスカスカの状況である。大関に上がる力さえ付けば上がれるのでライバルよりも自分の相撲を取ることに集中したい。