2023年3月場所を振り返って 貴景勝に関して

 2023年3月場所は関脇霧馬山が12勝3敗という成績で初優勝を果たした。千秋楽の本割で2敗の小結大栄翔に勝って優勝決定戦に持ち込み、決定戦は物言いが付く際どい一番となったが突き落としで制し、逆転優勝した。モンゴル出身力士の優勝は9人目。新関脇優勝は昨年3月場所の若隆景以来、史上4人目となった。また師匠の元大関霧島の陸奥親方にとっても部屋を継承して27年目にして弟子が部屋に初優勝をもたらした。霧馬山は大関候補だが、弟子の優勝は悲願達成と言える。本人だけでなく、部屋にとっても価値のある逆転優勝だったのは間違いない。それでは優勝争いを振り返っていきたい。

 今場所も横綱照ノ富士が休場ということで先場所優勝し、今場所綱取りの大関貴景勝に期待と注目が集まった。しかし初日に翔猿に敗れて黒星スタートとなった。そして3日目は正代に押し出しで勝ったが取組中に左膝を痛めた。翌4日目は阿炎のスピードに付いていけず、叩き込みで敗れて2敗目。そして6日目は御嶽海に押し出しで敗れて3敗となり、綱取りが厳しくなった。また左膝の状態が悪化したということで7日目から休場となった。綱取りから一転、5月場所はカド番で迎えることになった。そして横綱・大関陣の休場は昭和以降初の異常事態となった。前回の綱取りだった去年の1月場所も途中休場でカド番となっており、前回と同じ結末となってしまったのが非常に残念である。綱取りに関しては当然一からやり直しだが、優勝すれば綱取りのチャンスが出てくる。もう1回体を立て直し、チャンスを作っていくしかない。ただ関脇以下の力士が力を付けてきており、特に豊昇龍と琴ノ若は年齢が若い。綱取りのチャンスはおそらくあと1回だと思う。綱取りに関してはもう後がないくらいの気持ちで臨んで欲しい。