2023年1月場所個別評価 東龍

 今場所は先場所同様、西前頭14枚目だったが9勝6敗で勝ち越した。初日から白星が先行し、前半戦は6勝2敗で折り返した。そして後半戦は12日目に平戸海を上手投げで破り、幕内10場所目にして初めて勝ち越しを決めた。また新入幕から58場所での勝ち越しであり、新入幕から勝ち越しまでのスロー記録は2021年1月場所で29場所目で勝ち越した明瀬山を抜いて史上一位となった。そして幕内初勝ち越し時点の年齢でも1957年9月場所の小野錦の35歳6か月を上回る35歳8か月での勝ち越しとなり、昭和以降新入幕の力士における最年長記録となった。翌13日目は9勝目を挙げたものの残り2日は連敗し、二桁勝利は成らなかった。

 さて東龍の紹介をしたい。東龍はモンゴル出身で玉ノ井部屋所属であり、年齢は35歳である。身長192センチ、体重159キロと体格に恵まれており、手足が長く、懐が深い力士である。また右四つ・寄りと上手投げを得意としているが左四つでも相撲は取れる。そして右でも左でも上手を取ると力を発揮するタイプの力士である。

 内容に関しては四つに組み止める相撲と投げ技で白星を挙げていた。特に良かったのが2日目の水戸龍戦と13日目の千代翔馬戦である。水戸龍戦は立ち合いからお互いに左上手を取る展開となった。そして水戸龍に寄られるも何とかこらえ、その後水戸龍の左上手を切った。今度は東龍の右と水戸龍の左の差し手争いとなったが水戸龍が二本差し、東龍は外四つとなった。しかし最後は東龍が左へ体を開き、右からの上手投げで水戸龍を転がした。水戸龍の方が体重が重いがリーチの長さが活きた格好である。千代翔馬戦は相手の突き放しに応戦し、得意とは逆の左四つに組み止めた。有利な体勢ではあるが千代翔馬は粘り腰がある。体勢的にはどうかと思ったが、千代翔馬が左下手投げを打ちに来たところを逆に右上手投げで転がした。どちらも投げ技で勝ったが、投げにこだわっている訳ではなく、流れの中で決めており、やはり投げ技は上手い。一方負けた相撲に関しては叩いて懐に呼び込む形で負けた相撲が多く、このあたりが今後の課題である。千代翔馬戦のように引かずに受けられれば白星は更に見込めると思う。

 3月場所は自己最高位を更新し、東前頭11枚目となったが再度の勝ち越しを期待したい。師匠の元大関栃東の玉ノ井親方が言うようにまだ一皮むけていない印象がある。年齢は35歳だが懐が深い上に体が柔らかい。古傷の右膝次第という部分はあるが、幕内力士の圧力に対応さえできれば番付上昇は十分見込める。年齢的にはベテランだが、今場所の結果に満足せず、上を目指してほしい力士である。