2023年1月場所を振り返って 優勝争い その5

 そして面白かったのが結びの一番である。豊昇龍は手負いだが、何をやってくるか分からない。何より勝ち越しが懸かっている。貴景勝はおそらくそう考えたのだろう。立ち合いで自ら先に手を付くという「作戦」に出た。いつもは相手に先に手を付かせてから自ら手を付くというスタイルである。まさかの動きに豊昇龍はたまらず待ったをした。そして二回目も貴景勝が先に手を付き、今度は豊昇龍が応じて立った。怪我をしているのが分かっているので貴景勝は相手を見ながらの立ち合いとなった。そして豊昇龍は全力で押しに行ったが左足が流れ、そこを貴景勝が落ち着いて叩き込んだ。ただ勝っただけではなく、貴景勝があらゆることを考えて土俵に上がっているのが観ていて分かる一番だった。さすがは大関である。大関の座をあっさり明け渡した御嶽海や正代とは全然違う。14日目終了時点で3敗は貴景勝と琴勝峰の二人、そして4敗が霧馬山と阿武咲の二人となった。

 千秋楽の取組だけは14日目の全取組終了後に組まれるが、トップが二人となり、対戦がなかったので貴景勝と琴勝峰の割が組まれた。勝った方が優勝であり、これで4敗力士の優勝の可能性がなくなった。また結果論ではあるが、千秋楽に大関との直接対決に持ち込んだ琴勝峰は評価できる。対戦しない可能性もあったが協会としては決定戦には持ち込ませたくなく、その意味で14日目に大関が勝ったのは当然として、琴勝峰が勝ったことは大きな意義があったと私は思っている。

続く