2022年9月場所個別評価 玉鷲

 先場所と同じ東前頭3枚目という番付に据え置かれたが13勝2敗の好成績で2度目の幕内最高優勝を果たすと同時に2度目の殊勲賞を受賞した。初日から白星を並べ、自身初の初日から6連勝を記録した。また一横綱二大関を破り、勢いに乗った。7日目は若隆景に突き落としで敗れ、初黒星を喫するも8日目から再び連勝し、9日目に勝ち越しを決めた。そして10日目は御嶽海を掬い投げで破り、対横綱大関戦に全て勝った。なお平幕力士の横綱大関戦全勝は1985年7月場所に二横綱三大関を破った北尾、後の双羽黒以来37年ぶりである。12日目に若元春に敗れて2敗となったが、2敗力士も敗れ、単独先頭は変わらずという状況は本人にとってラッキーだった。13日目からは再び白星を挙げ、2敗を守ると千秋楽は星一つの差で追走していた高安を押し出しで破り、優勝を決めた。37歳10ヶ月での幕内最高優勝は旭天鵬を抜いて昭和以降の最年長記録となった。

 内容に関してはのど輪押し中心の突き押し相撲で白星を挙げていたが、やはり4日目からの横綱、大関戦で自分の相撲を取って勝ち、勢いに乗ったという感じである。そして私はポイントは13日目だったと見ている。前日は若元春にのど輪押しを止められ、逆に寄り切られた。また内容も良くなく、しかも残り3日ある。そして13日目に敗れれば4敗力士にも優勝の可能性が生まれ、大混戦となる。しかし13日目の錦富士戦は立ち合いで当たり勝ち、相手が大きくバランスを崩したところを突き落とした。ここを乗り切ったことは本人にとっても大きかったと思うし、優勝争いの人数が絞られたという意味でも大きかったと言える。14日目は翔猿を一方的に押し倒し、優勝への流れを作った。そして千秋楽の高安戦はのど輪押しで相手に反撃の目を与えず、そのまま押し出した。優勝という結果だけでなく、13勝での優勝というのも価値がある。

 そして私がもう一つ気になっていたのはスタミナの部分である。最近の玉鷲は平幕上位の番付は維持しているものの、後半戦は黒星が増えるといった成績が続いていた。確かに37歳という年齢なので15日間トータルで好内容の相撲を取るのは厳しいと思う。その意味で後半戦に大崩れしなければいいが…と見ていた。しかし連敗はせず、しっかりと乗り切った上で結果を出した。これはもう素晴らしいとしか言いようがない。ベテランだが体に張りがあり、稽古も十分にできていたようだ。

 来場所は3年ぶりの三役復帰となるが、勝ち越しを期待したい。のど輪押しの威力は健在であり、照ノ富士から金星を挙げ続けているように衰えは全く見られない。欲は無さそうなので上を目指すといった意欲はあまり感じられない。それはともかく、来場所に限らず自分の相撲を取り続け、上位力士を苦しめるような相撲を期待したい。