2022年9月場所個別評価 正代

 先場所は1年半ぶりに2桁勝利を挙げ、カド番を脱出したが今場所は4勝11敗と振るわず、来場所は5度目のカド番となった。初日は翔猿に勝ち、しかも4場所ぶりの初日白星ということで好スタートを切ったかに見えた。しかし2日目からは連敗し、何と9日目に負け越しが決まってしまった。9日目での負け越しは大関では15日制が始まって以来史上最速であり、不名誉な記録となった。その後11日目に若元春に勝ち、ようやく連敗を止めた。その後も2勝を挙げ、少しだけ巻き返したが大関としての役割は果たせなかった。

 内容に関しては立ち合いの当たりが弱い上に土俵際での粘りもない。8日目にテレビ解説の元白鵬の宮城野親方が「どこか悪いのではないか」と指摘していたが、私もそう思った次第である。確かに大関昇進後、地位に相応しい成績を残していないのは事実である。しかし9日目に負け越すほど弱い力士ではない。そして私は場所後に知ったが、一部報道で右足親指の巻き爪及び化膿が原因で踏み込めなかったらしい。この報道は8月31日であり、9月場所直前である。おそらくこのことが原因で大きく負け越したものと思われる。そして注意して見るといつもより立ち合いの踏み込みが弱く、また右の親指を浮かせる場面も何度か見られた。おそらく本人は多少の痛みなら出場することが大関としての務めだと思っているのだろう。言い訳もしていなかった。また面白かったのが負け越しが決まっても正代の名前が入ったタオルを掲げ、応援するファンが多かったことである。私は正代のファンではないが、どこか頼りない雰囲気があり、強さと脆さが同居している相撲の取り口も含めて、応援したくなる気持ちは分かる。顔つきを見ても大相撲独特の厳しさというものがなく、現代の若者に近い感覚がある。おそらく本人なりに頑張っているのを多くのファンは分かっているのではないだろうか。

 さて来場所はカド番となるが、まずは右足の親指の状態を元に戻したい。親指なので力が入らない限りは相撲にならない。しかし踏み込めるようになればカド番脱出はおそらく大丈夫だと私は見ている。何より来場所負け越すようなことがあれば、御嶽海が10勝以上を挙げ、特例復帰しない限り、来年の1月場所は大関が貴景勝一人になってしまう。そのことは是非忘れないで頂きたい。何としても勝ち越し、大関の座を守ることを期待したい。