2025年11月場所個別評価 時疾風
今場所は西前頭14枚目だったが9勝6敗という成績だった。前半戦は6勝2敗で折り返した。そして後半戦も白星を伸ばし、11日目に勝ち越しを決めた。翌12日目は熱海富士に勝って3敗を守り、優勝争いでトップと星一つ差で追った。しかし終盤は3連敗し、二桁勝利とはいかなかった。
場所1週間前にぎっくり腰を発症させていたみたいだ。「この世の終わりみたいな痛みだった」と激痛で稽古も数日間休んだ。しかしフタを開けてみると序盤から白星が大きく先行した。「全然痛くありません」と場所に入り、症状はすっかり消えていた。またテーピングは施しておらず、序盤は腰の具合を確かめているように見えた。本来の粘りのある相撲が取れており、自分の相撲が取れていた印象である。
6日目の欧勝海戦はお互い左四つが得意ということで当たってすぐに左を差し、右上手を取った。そして上手投げに行き、左外掛けで残されたが再び投げて転がした。勝因は欧勝海得意の右上手を与えなかったことである。速い相撲で新入幕を料理した。9日目の藤ノ川戦は差し負けた上に左前廻しを取られた。しかし出し投げに乗じて左を巻き替えてモロ差しとなり、形勢が逆転した。藤ノ川の右首投げをこらえると体を寄せて寄り切り、2敗対決を制した。11日目の豪ノ山戦は突き起こされて押し込まれたものの左へ回り込んで凌いだ。そして再度押し込まれたが左上手を取っての出し投げで這わせ、勝ち越しを決めた。豪ノ山は上位力士を倒した実績があり、ぶちかましてからの攻めを凌いでの白星ということで今後への自信となりそうだ。
また終盤の3連敗は仕方がない。本場所で対戦したことで勉強になったはずである。この経験を次に生かしたい。
来年1月場所は自己最高位の東前頭10枚目となった。再度の勝ち越しを期待したい。また身長179センチ、体重132キロの小兵であり、平幕上位に番付を上げれば土俵を盛り上げてくれそうだ。体の割には相撲が大きく、胸を合わされるとあっさり土俵を割ることもある。しかし廻しを取るとしぶとく、土俵際の粘りも持っている。そして少しずつだが着実に力を付けており、今後が非常に楽しみな存在である。