2022年7月場所個別評価 照ノ富士
今場所は11勝4敗という成績だった。初日に阿炎に敗れ、黒星スタートとなった。そして5日目は逸ノ城に寄り切りで敗れて2敗となり、優勝に向けては少し苦しい星勘定となった。しかし6日目からは持ち直し、白星を並べた。逸ノ城とともに2敗を守り、マッチレースとなった。しかし終盤に落とし穴が待っていた。14日目に正代に引き落としで敗れ、3敗となったが逸ノ城も敗れ、並走のまま千秋楽を迎えた。そして千秋楽は逸ノ城は3敗を守ったが貴景勝に敗れて4敗となり、優勝を逃した。
内容に関しては右四つに組み止める相撲で白星を挙げていたが、初日に阿炎に敗れた相撲は膝に不安を感じさせるものだった。立ち合いから阿炎の突き押しを受け止め、一気に前に出たものの、土俵際で阿炎に右からいなされ、そのまま送り出された。結果的に焦って前に出てしまった格好となったが、膝の状態がもう少し良ければこんな相撲にはならなかったと思う。膝の状態が良くないからこそ急いで勝負に出てしまう。私にはそう見えた。
そして5日目の逸ノ城戦は立ち合いから相手十分に組まれることはこれまでもあった。それでも横綱が少しずつ体勢を有利な形に持っていき、最後は寄り切るといった内容が多かった。しかし今回は二本差された上に右を深く差され、極められずに最後は寄り切られた。これは横綱が、というよりも逸ノ城を褒めたくなる相撲内容である。しかし四つに組み合って負けることはほとんどないので本人はショックを受けているのではないかと私は思った。しかしそこは横綱である。6日目からは白星を並べ、優勝こそできなかったものの、千秋楽まで優勝争いに絡んだことは評価したい。
また6日目からは連勝はしたものの、苦戦した相撲も多かった。8日目の若元春戦は相手得意の左四つに組み合う形となり、長い相撲となった。結果的には若元春の廻しが緩み、廻し待ったになったのが救われた。9日目の遠藤戦は最後は押し出したものの、途中は二本差され、懐に入られる危ない体勢もあった。そして11日目の豊昇龍戦は上手を取られ、何度も出し投げを打たれるなど苦労した。結局こういった苦戦した内容で膝の疲労が蓄積したのではないかと推測している。
さて来場所に関しては横綱なのでやはり優勝を期待したい。今場所優勝を逃したので優勝回数10回は年内のクリアは不可能となったが、それでもチャンスは十分ある。また場所後の夏巡業では申し合いにも参加しており、膝の状態も思ったほどは悪くなさそうである。そして今度は東京場所なので膝の状態をサポートする環境が整う。気持ちを切り替え、一人横綱としての責任を果たしてほしい。