2022年5月場所を振り返って 優勝争い その3

 13日目。平幕で3敗の佐田の海は豊昇龍戦だったが寄り倒しで破り、3敗を守った。立ち合いから二本差してこじ入れると左を深く差し、一気に寄り倒した。物言いが付いたが軍配通り佐田の海の勝ちとなった。これぞ佐田の海という二本差しての速攻相撲だった。また父の元佐田の海を彷彿とさせる内容だった。父は元小結であり、現役時代は差しての速攻相撲で上位力士を苦しめた。佐田の海は三役経験はなく、父には一歩及ばないといった印象がある。しかしこの相撲に関しては文句のつけようがなく、父に一歩近づいた感じがした。父の鮮やかな速攻相撲を覚えているだけに私にとっては嬉しい一番だった。

 隆の勝は若隆景戦だったが仕切りから明らかに表情が硬い。一方の若隆景はここまで6勝6敗であり、勝ち越しに向けて後がない状況でありながら涼しい表情で仕切っていた。この時点で私は若隆景が勝つだろうと思っていた。相撲は若隆景が立ち合いから押し込むと引き落としに隆の勝があっさりと手を付いた。11日目から単独先頭であり、そのプレッシャーに気持ちが持ちこたえられなかったのだと思う。そして優勝するのは簡単なことではないというのを改めて思い知らされた。

 照ノ富士は貴景勝戦だったが立ち合いから押し込まれるも全く後ろに下がらない。両者が見合ったところで勝負あったという感じである。その後貴景勝が猫だまし、つまり相手の目の前に両手を突き出して手のひらを合わせて叩くも照ノ富士には全く効果がなかった。最後は照ノ富士が右を差すと貴景勝の動きが止まり、そのまま寄り倒した。これで13日目終了時点で2敗がいなくなり、3敗で照ノ富士、隆の勝、佐田の海の3人がトップで並んだ。また4敗で小結大栄翔など4人が追走していたが、照ノ富士の相撲内容が良くなっており、負ける可能性が低いと考えれば実質的には優勝争いは3人に絞られたと言っていいと思う。照ノ富士が負けない前提に立てば平幕の2人は残り2日勝つことが優勝するための最低条件となる。

続く